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【経済Q&A】

ネット障害で補償あるの? 証券取引など賠償請求困難

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 全国規模のインターネット障害が先月25日に発生し、数時間にわたって銀行のホームページにログインできなかったり、通信販売のサイトが利用しにくくなるなどの影響が出ました。仕事や取引で損害を受けた人もいると思われますが、ネット事業者に補償や賠償を求めるのは難しいようです。理由を整理してみました。 (吉田通夫)

 Q 今回の障害では何が起きたのでしょうか。

 A 楽天証券などのネット証券、JR東日本の予約サイト、銀行のりそなホールディングスなど、幅広いサイトがつながりにくくなりました。ネットへの接続事業者であるNTTコミュニケーションズやKDDIが障害が起きていることを公表。翌日、ネットの運営で提携関係にある米グーグルが、自社のミスが原因だったと認めました。

 Q 「ネット証券につながらず取引のタイミングを逃した」など、損失があった場合の賠償はどうなるのでしょうか。

 A NTTコミュニケーションズやKDDIの約款は、自社に原因があり、かつ二十四時間以上つながらない場合に賠償すると規定しています。しかし、賠償するのは利用料だけで、一日につき数百円程度。国内の接続事業者の約款はだいたい同じ内容です。

 ネットをめぐる問題に詳しい岩永利彦弁護士は「ネット証券の損失など、利用料以外の賠償を求めるのは難しいだろう」との見解を示しており、障害の原因となったグーグルに対しても「賠償請求は困難」とのことです。

 Q なぜ難しいのでしょうか。

 A ネット事業者の責任はネットを利用できるようにすることなので、つながらない場合は利用者に料金を返金します。しかしネット証券での損失など二次的な損害は、法律上は「拡大損害」という別の扱いになります。民法はこうした「特別の損害」について、「当事者がその事情を予見」できなければ賠償を請求できないと規定しています。

 例えばAさんがネット証券で損した場合、KDDIなどの事業者はAさんがネット証券で取引していることなど個々の事情は知らないでしょうから、賠償を求めるのは難しいということです。

 Q 利用者に不利ではないでしょうか。

 A 電車が止まった場合も「商談に遅れて損害を被った」といった賠償請求は一般的に認められません。トラブルから派生する損害をすべて賠償するならば、事業者は際限のない費用を準備するために料金を引き上げなければなりません。岩永氏は「安い料金を維持するために、利用者がある程度のリスクを負うのは仕方がない」と指摘します。

 ただし、生活にネットが欠かせなくなり、障害が起きた場合の影響も大きくなってきました。障害が起きないようにする努力はもちろん、どこかの回線で障害が起こっても迂回(うかい)ルートで通信できるようにするなど、「止まらないインターネット」にするための対策も必要です。

 

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