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【経済】

「農福連携」広がる 農家は人手確保、障害者の自立に道

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 障害のある人が農業の現場で働く例が急増している。高齢化で働き手が不足するなか、農家は障害者を貴重な労働力として歓迎、障害者にとっては安定収入を得られ経済的自立を目指すことができる。「農福連携」という新たな取り組みに、国や自治体も支援に乗り出している。 (白山泉、写真も)

 見渡す限り雪原が広がる北海道・十勝平野。株式会社「九神(きゅうじん)ファームめむろ」(芽室町)の調理場では、白衣に身を包んだ知的障害者らが、秋に収穫したジャガイモの皮むきやパック詰め作業をしていた。

 二〇一三年に設立されたファームでは、約二十人の障害者が働く。三ヘクタールの農地でジャガイモなどを栽培しポテトサラダやコロッケの材料に加工。総菜メーカーに販売する。管理者の古御堂(ふるみどう)由香さん(40)は「できる仕事を精いっぱいやってもらっている。一人欠けても作業は進まない」と語る。

 「誰もが働いて生きていける場所」を目指すファームの月給は約十一万円。障害者施設の平均約七万円を上回り、約六万円の障害者年金と合わせれば経済的に自立できる水準だ。

 精神障害者や知的障害者らが農業分野で働く「農福連携」は、〇八年のリーマン・ショック後に注目されるようになった。製造業の海外移転が進み、下請け作業をしていた障害者の職場は減少。一方で農業現場では人手は不足している。

 ニーズが合ったことで両者の連携は加速。農林漁業に就職する障害者は十年前の五倍に増え、一四年度には二千八百七十人となった。

 発達障害など精神的な障害のある人のなかには、自然とふれあう農作業を続けるうちに、心の病などが改善。給付金の受給をやめ、健常者として新たに歩み始める人なども出ている。

 「農福連携」を進めるため、厚生労働省や農林水産省のほか、長野県や香川県も障害者施設と農家を仲介する事業などを実施。官民が手を合わせ、二〇年の東京五輪・パラリンピックで障害者が手掛けた農産物や加工品の販売計画も進む。

白石さん(右)と言葉を交わしながら、収穫作業する障害者の男性=東京都練馬区の白石農園で

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◆「土とふれ合い、やりがい」農地確保、収益拡大が課題

 障害者の生きがいとなる取り組みが増えている「農福連携」。一方で農地の確保や収益の維持が大きな課題となっている。

 東京都練馬区で露地野菜を生産する白石農園。四十代の男性は会社員時代に統合失調症を患い、八年前から働いている。「土のひんやりした感触が気持ちが良く、育った野菜を収穫するのもやりがいがある」

 家族経営の白石農園にとって、高齢化するパートに代わる人材としてありがたい存在だ。経営する白石好孝さん(61)は「人との摩擦がストレスになって心を病んだ人は、自然の中で体を動かす作業が合っているようだ」と語る。

 しかし、障害者を雇うことにちゅうちょする農家も多い。障害者施設が新規参入しようとする時の高い壁は、農地や農業技術の確保だ。JA共済総合研究所の浜田健司研究員は「各地の農協が主体的に動き始めれば農福連携はさらに広がるはずだ」と指摘する。

 またビジネスとして成立することも不可欠だ。「経営感覚がある人がいなければ、賃金を払い続けることができない」とNPO法人「多摩草むらの会」(多摩市)の風間美代子代表理事(70)は語る。

 「草むらの会」では、精神障害者ら約七十人が六百種類以上の野菜などを栽培。ジャムや漬物の加工に取り組み、道の駅や居酒屋に出荷する。「『障害者が作ったもの』というお情けではなく、どこに出しても通用するものを作り、販路を広げる努力がいる」とする。

 

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