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【経済】

花形企業 陰の実態 電通社員自殺問題

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 「広告界のガリバー」と呼ばれ、テレビやスポーツイベントで存在感を発揮する電通。社員やOBへの取材を進めると、国内トップの業績や華やかなイメージの裏側で、壮絶な過重労働を社員に強いる実態が浮かび上がった。 

 午前零時から会議を始め、午前四時に帰宅。それでも朝早く出社するのが当たり前。週に一度は仕事で徹夜…。数年前に退職した四十代の男性が振り返る。

 「広告主へのプレゼン前には月二百時間は残業していた。ライバル社に絶対負けるなとハッパを掛けられ、チーム一丸で戦うという高揚感もあった。体育会系の部活に似ていますね」

 ひと呼吸置いてから言葉を続けた。「今思うと狂っていたとしか思えない。あのまま働いていたら体を壊していただろう。あしき伝統です」

 入社直後は厳しい指導を受けるという。「取り組んだら放すな、殺されても放すな」と強烈な文句が並ぶ社のモットー「鬼十則」を暗記するよう求められ、「広告主への気配りを学ぶため」と称して、焼き肉の焼き方やカラオケの選曲にまでだめ出しが続く。二十代の女性社員は「つらいけれど、みんな乗り越えてきているから」と語った。

 上意下達の雰囲気に疲弊し、長期休養する社員が多いが、複数の現役社員を取材すると「やりたい仕事をやっている」「ブラック企業と呼ばれるのは心外」と自社への愛着がにじむ答えが返ってきた。「うちは狙い撃ちされた」と捜査への反発を口にする男性社員もいた。

 二十五年前に自殺した男性社員は入社二年目。今回の書類送検容疑となった違法な長時間労働を強いられ、昨年十二月に自ら命を絶った高橋まつりさんと同じ二十四歳だった。

 八十代となった男性の父親は、十月に高橋さんの過労自殺を報じるニュースにショックを受け、救急車で運ばれた。母親も「息子のことはもう触れられたくない」と口は重いが、これだけは、はっきり言った。「電通には今度こそ本当に変わってほしい」

◆パワハラに直結

<労働ジャーナリストの金子雅臣さんの話> パワハラがあったという遺族側の主張に対し、電通も、行きすぎた指導があったことを認めた。新人をサポートしながら育てるのではなく、崖から突き落とすようなやり方で鍛える企業体質が垣間見えた。業務量があまりに多いと、能力が不十分な若手社員に組織が過大な要求をし、パワハラにつながりかねない。過労自殺の要因となるパワハラをなくすため、仕事の量や働き方を見直していく必要がある。

 

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