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【経済】

東芝 原発事業縮小へ 稼ぎ頭の半導体「切り売り」

 東芝は二十七日、米国で最大七千億円程度の損失が見込まれる原発事業を大きく見直し、事業の縮小を検討すると発表した。原発による巨額の損失で追い込まれた会社の生き残りのために、稼ぎ頭の半導体メモリー事業を三月末をめどに分社化し、外部の出資を得て立て直しを急ぐ。国の原発事業の一翼を担ってきた東芝は、事業を大きく転換する。

 東京都内で記者会見した綱川智(つなかわさとし)社長は、米子会社が買収した建設会社で損失を出した原発事業について「エネルギー事業の中で最注力としてきたが、この位置付けを変えていく」と述べた。国内は「廃炉、保守・改修を中心に社会的責任を果たす」とし、新規建設を進めてきた海外は「今後のあり方も含め見直す」と語った。原発事業は社長直轄の組織に再編し、管理を強化する。

 パソコンに使うフラッシュメモリーなどメモリー事業は入札を行い、20%未満の出資を得て二千億〜三千億円を調達し、その資金で東芝グループの財務基盤を強化する。三月末までの手続き完了を目指す。三月下旬に臨時株主総会を開き、承認を求める。綱川氏は「分社化によってメモリー事業の競争力強化とグループの資本増強が実現できる」と強調した。

 東芝は原発事業による巨額の損失で、負債が資産を上回る債務超過に陥る可能性が指摘されていた。

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◆元社員、中央大教授・竹内健氏に聞く 「大震災機に手を引くべきだった」

 かつて東芝の社員として半導体の製品開発のプロジェクト責任者を務め、今は中央大で半導体の研究を続ける竹内健教授(49)は本紙の取材に対し、原発事業に固執する東芝への疑問を口にした。 (聞き手・伊藤弘喜)

 私たち半導体部門はキャッシュカウ(稼ぎ手)として金を生むだけなのか。原発など他の事業のために便利に使われるだけか。そんな悔しさを感じていました。

 半導体は技術の入れ替わりが激しい。技術に強みを持つ東芝だが、稼ぎ手として使い尽くされ、稼げなくなったら捨てられる。経営の視点では当たり前なのかもしれない。現場としては自分たち半導体部門で稼いだお金は自分たちの事業のために使いたいという思いでした。

 私は原発自体への賛否に関しては中立です。でも、原発のように期待されながら結局はもうからない事業に半導体の利益が当てられているように感じ、残念だった。そういうこともあって二〇〇七年に退社しました。

 一一年の東日本大震災を理由にして、東芝は原発から手を引けばよかった。その後も引き返す機会はいくらでもあったはず。なぜ意固地になって続けているのか理解ができません。

◆「原発でごたごたしている場合ではない」

 今も優秀なかつての同僚や大学の教え子たちが東芝の半導体事業で頑張っている。グーグルやアマゾンなど新たなプレーヤー(競争相手)が参入し、次世代の情報インフラの覇権争いが始まっている。こんな重要なときに原発でごたごたしている場合ではないのです。

 二〇〇〇年代は「原子力ルネサンス」と称して、原発推進の機運が盛り上がった。東芝は大きすぎる会社で、原子力事業なんて、別の会社、別の国の話のように感じた。遠くの話だ。同じ社内にいるのに原子力ルネサンスといっても、まったく訳が分からなかった。

 (原発事業を含む)エネルギーやインフラ事業は息の長い取り組みになるので赤字が続いても許される傾向があると感じた。それに対してIT、パソコン、半導体は良くも悪くもすぐに勝負がつく。負けたときは「はい、終わり」と。

 つぶれる寸前までいけば、「これはしょうがない」と納得できる。うまくいっているときは難しいんです。だから、東芝はある意味、今がチャンスなのかもしれない。

 まだまだ東芝の半導体は世界のトップレベルで、私の教え子たちも入社し続けている。願わくば、今回の分社化がその場しのぎのためではなく、新たな競争を勝ち抜くための前向きな一手になってほしい。せっかく素晴らしい技術を持っているのだから。

 

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