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【経済】

トランプ氏「WTOより国内法」 発言の数々、規則違反濃厚

 トランプ米政権は一日、議会に提出した通商政策の年次報告書で、他国や世界貿易機関(WTO)が米国の利益を阻む場合は「抵抗する」と宣言した。自国の雇用を優先する保護主義的なトランプ大統領のこれまでの発言の多くは、政策として実行すると、WTOのルールに抵触する可能性が高い。違反を承知で強硬策に出た場合、これまで築き上げた国際的な通商秩序の土台を揺るがす恐れもある。 (矢野修平)

 報告書では、WTOが貿易紛争の解決で米国に不利な裁定を下した場合は「そのまま従うことはない」とし、自国の法律を優先させる方針を示した。日本などを念頭に、離脱した環太平洋連携協定(TPP)参加国との二国間交渉を進める意向も表明。不公平な貿易相手国に高関税などの制裁を科す通商法三〇一条の発動も検討する。

 現行のWTOのルールでは、各国が約束した上限以上に関税を引き上げることはできない。さらに、三〇一条による経済制裁をちらつかせ、輸出の自主規制や輸入の自主拡大を相手国に迫るような手法も違反となる。

 トランプ氏はこれまで、トヨタ自動車のメキシコ新工場に対し「米国に工場を造れ。さもなくば多額の税金を支払え」と表明するなど、意に沿わない貿易に高関税を掛けることを示唆。国際経済法に詳しい東大の中川淳司教授によると、これはルール違反だ。

 ただ、紛争処理の手続きは解決まで二年近くかかる。その間、制裁を止める強制力もなく、過去に支払った不当な関税分を賠償させることもできない。中川氏は「違反は『やり得』という面もある」と指摘する。

 今後、日米間の通商問題は両政府が設置を決めた「経済対話」で協議される。米国から厳しい市場開放を迫られる懸念がある。中川氏は「無理筋な要求に対しては、相手の土俵に乗らずにWTOを活用し、国際的な世論を味方につけて対抗すべきだ」と話す。

 WTOは一九九五年に発足。紛争処理の手続きや経済制裁に関するルールが強化され、強引な市場開放の要求にも一定の抑止力となってきた。米国もWTOを尊重してきた経緯がある。

◆「米に通商上の懸念」 WTO事務局長声明

 【ジュネーブ=共同】WTOの判断に今後縛られないとした米通商代表部(USTR)の年次報告書について、WTOのアゼベド事務局長は二日、声明を発表し「米国にさまざまな通商上の懸念があることは明らかだ」とし、いつでもUSTR側と協議する用意があると述べた。

<米通商法301条> 貿易相手国の不公正な取引慣行に対する制裁措置を定めた米通商法の条項。1974年制定。米通商代表部(USTR)が相手国と交渉し、クロと認定すれば、輸入関税引き上げなどの報復措置を一方的に取る。88年には、迅速な手続きを定めたスーパー301条も制定(失効)。一方的制裁を禁じた世界貿易機関(WTO)協定違反との指摘もある。かつての日米貿易摩擦では、米国がこれらに基づく制裁をかざして日本に輸出制限や市場開放を迫った。

 

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