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【経済】

「米国第一」で翻弄 共同声明 パリ協定促進除外

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 ドイツで開かれた二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議はトランプ米政権発足後初の国際経済会議となり、「米国第一主義」に振り回された。国際貿易を巡る議論で、ムニューシン米財務長官と他国の間で意見が折り合わず紛糾。一時は貿易そのものに関し一切触れない共同声明案が検討される混乱ぶりとなった。(ドイツ南西部バーデンバーデンで、阿部伸哉)

 ■隠された意図

 米国の揺さぶりは会議前日の十六日から始まった。

 「米国は貿易戦争を望まない。トランプ大統領は自由貿易、特に自由で公正な貿易を望んでいる」。ムニューシン米財務長官は会議のホスト国、ドイツのショイブレ財務相との会談後、意味ありげに語り、ここで使った表現を全体会議にそのまま持ち込んだ。

 「公正」。一見、前向きな響きを持つ言葉だが、対米貿易で黒字を持つ欧州連合(EU)や中国などは敏感に反応した。歴代の米政権が「公正」と言う場合、「貿易不均衡を正せ」という圧力として使われることが多かったからだ。

 中国など各国は、過去の日米貿易摩擦を研究。貿易黒字削減のために日本が米国から数値目標の達成を迫られ、自動車産業が輸出台数の自主的制限に追い込まれたことを意識している。

 欧州の交渉筋によると、米国の主張に対しEUは「ルールに基づいた貿易」という代替案を出し対抗。議論は収拾がつかなくなった。その中で日本の麻生太郎財務相は米国の主張に足並みをそろえた。「既に二月の日米首脳会談で、『自由で公正な貿易』という表現を使っている」(財務相同行筋)という理屈だ。

 日本は既に米国と二国間協議の枠組みに同意。麻生氏が副総理として四月にもペンス副大統領と経済対話を始める事情もある。

 議長国ドイツも、議論をまとめるために苦心。七月に自国のハンブルクでG20首脳会議を控えており、会議を空中分解させるわけにはいかなかった。

 ■配慮も生きず

 共同声明からは、地球温暖化対策に関する国際枠組み「パリ協定」の実施を促す文言は外された。協定に否定的なトランプ政権を意識したとみられる。

 一方の米国も、日本や中国などの懸念材料だった「為替操作批判」を封印。「金融の実務をよく分かっている」。麻生氏は米金融大手ゴールドマン・サックス元幹部のムニューシン氏への好感触を語った。

 それでも混乱した会合。米国は最終的に「公正」を取り下げたが、前回声明にあった「保護主義への対抗」も削られた。声明で「貿易」の単語が出てくるのは一カ所だけとなった。

 「米国は思い通りにならないG20の利用価値に見切りを付けるかもしれない」。国際経済交渉経験がある日本外交筋の一人はそんな見立てを口にした。リーマン・ショックなど米国発の金融危機に対応するため、二〇〇八年秋に始まったG20。トランプ氏が今回の議論を受け、七月の首脳会議でどう振る舞うかが注目点となる。

 

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