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【経済】

日本郵政、民営化後初の赤字 海外進出の初手でつまずく

 日本郵政は二十五日、二〇一七年三月期の連結純損益が四百億円の赤字(前期は四千二百五十九億円の黒字)に転落する見通しだと発表した。一年間の通期で赤字になるのは〇七年十月の郵政民営化後、初めて。一五年五月に買収したオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスの業績悪化に伴い、四千三億円の損失を計上することが大きく響いた。

 経営責任を明確にするため、日本郵政とトールを傘下に置く日本郵便の全役員は六カ月間、報酬の30〜5%を返上する。六千二百億円でトールを買収した時に社長だった日本郵便の高橋亨(とおる)会長は、代表権を返上する。

 トールは買収前の一四年に年間約四百億円の営業利益があったが、資源価格が下落した影響で鉱山地区の輸送が減少するなど利益が急減した。また、トールは百件以上の企業買収や合併をしたことで社内に似た部門が多く残り、業務のムダも増えていた。日本郵政はトールを立て直すために今年一月、経営陣を刷新し、三月までに約四万人の従業員のうち管理職を含む三百人を削減していた。

 東京都内で記者会見した日本郵政の長門正貢(まさつぐ)社長は赤字転落について「役職員一同、大変重く受け止めている」と謝罪した。巨額の損失を計上するのは、トールのブランド価値にあたる「のれん代」の評価を大きく引き下げることが影響しており、長門氏はトール買収の「価格が高かった」と査定の甘さを認めた。一方で「トールは引き続き世界展開の中核」と述べ、一七年度中に組織の簡素化を進め、千七百人超の人員を削減することを明らかにした。

 今回の損失計上で、傘下のゆうちょ銀行と、かんぽ生命保険の収益が悪化することはないという。

◆復興事業の財源想定 政府株売却影響も

 日本郵政が初の海外企業の買収で、いきなり四千億円超の損失を出した。事前の資産査定の甘さが原因だ。日本郵政は民営化されたと言っても、依然として政府が約八割の株式を保有中で、今後の株式の売却益は東日本大震災の復興財源に充てることになっている。今後の事業の立て直しがうまくいかなければ、復興事業にも影響が出る恐れがある。

 「不本意ながら資産査定が甘い方向にふれてしまった」。日本郵政の長門正貢社長は二十五日、トール・ホールディングスの買収額六千二百億円が「高値づかみ」だったことをにじませた。郵政側はトールの収益予想の見通しを甘くし、買収金額の基となるトールの企業価値を高く算定してしまった。

 日本郵政が不慣れな海外事業の買収に手を出した背景には、電子メールの普及で国内の郵便事業の苦戦がある。だが、買収後も物流を得意とするトールとの間で相乗効果を発揮できていない。トール再建も重複組織や人員の削減が中心で、本格的な業績回復の道筋を示せていない。一方で、今年六月にははがきの料金が五十二円から六十二円になるなど郵便料金の値上げに踏み切り、消費者に負担を強いる。

 早ければ七月にも一部の株式を売却する政府の計画にも、今回の巨額損失の影響が出る可能性もありそうだ。株式市場では巨額損失の可能性が浮上した二十日に、郵政株が年初来の安値を更新した。業績回復などで株価が上昇しなければ売却が遅れ、復興財源の調達に支障が出かねない。 (桐山純平)

 

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