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【経済】

保険契約書類に「遺伝」 加入審査で差別懸念

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 日本生命保険が販売する生命保険の契約内容を示した約款に遺伝に関する記載があり、家族の病歴や遺伝子検査の結果などの遺伝情報を加入審査で利用していると取られかねない内容となっていることが分かった。遺伝情報は病気の治療や予防に役立つと期待されるが、保険の審査に使うことは差別に当たるとの指摘もある。

 日生は遺伝に関する表記について「家族の病歴を審査に使っていた約四十年前の記載が残っていた。今は利用していない」と説明しており、近く削除する方針。金融庁もこの記載を把握しており「使っていない項目は、削除すべきだ」との見解を示した。

 生命保険会社は通常、本人の病歴などを基に将来の病気のリスクを評価し、保険加入の可否を審査する。日生によると、かつて生保各社は家族の病歴も審査に使っていたが、本人の発症リスクとの関連がはっきりしないため、日生は一九七五年ごろから利用をやめている。

 最近は病気の治療や予防のために遺伝子検査を実施する医療機関もあるが、国内では現在、家族の病歴や遺伝子検査結果などを審査に使う保険はない。

 問題の記載があるのは、日生の生命保険「みらいのカタチ」の約款。この中の例外的な契約内容を定めた条項に「健康状態、遺伝、既往症等が会社の定める基準に適合しない場合でも、保険契約の責任を負うことがある」との記載があり、加入審査の基準の一つに遺伝が含まれると読める。

 日生の説明では、家族の病歴の利用をやめた後も、この条項の記載が約四十年間、修正されずに残っていたという。金融庁が他の保険会社の約款を調べたところ、同様の記載は見つからなかった。

 生まれてから生涯変わらない遺伝情報を基に保険加入に差をつけることについて、海外では遺伝差別として規制している国もあるが、国内では明確なルールはない。

◆意識の低さを象徴

 遺伝差別問題に詳しい武藤香織・東京大教授(医療社会学)の話 このような約款が現在も残っていることは、実際には家族の病歴や遺伝子検査の結果を使っていなくても、保険業界の問題意識の低さを象徴しているようで極めて残念だ。金融庁は調査や指導を徹底してほしい。また消費者も関心をもって保険商品の契約に臨む必要がある。二〇〇〇年ごろに、保険業界での遺伝情報の利用について議論があったが、その後、途絶えてしまっていた。今後のゲノム(全遺伝情報)を活用した医療の普及に向け、個人の遺伝情報を適切に扱うために社会全体で議論を再開すべきだ。

 

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