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【経済】

森林環境税 見切り発車

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 政府・与党は、民有林の森林整備に使う新税「森林環境税」を二〇二四年度から導入する方針だ。全国の約六千二百万人が負担する個人住民税に、一人当たり年間千円を上乗せして徴収する。既に同様の税を集めている自治体もあるが、使い道の違いは明確になっておらず、住民は二重の負担を強いられることになる。 (白山泉)

 森林環境税は、全国の市町村が住民税に上乗せして徴収して一度国に納めた上で、民有林の面積などに応じて市町村に配る仕組みにする。法律で民有林の間伐や林道整備など「森林保全」に使途を定める特定財源となる方向だ。

 一方で、三十七府県と横浜市は既に、住民税に三百〜千二百円を上乗せして、間伐や林業の人材育成などのための財源を独自に集めている。しかし、森林環境税の使い道とのすみ分けは、今後の課題として積み残したままだ。

 横浜市は、市街地の緑化に使う「横浜みどり税」として、年間九百円を上乗せしている。さらに神奈川県も水源環境の保全に使う目的で上乗せしている。森林環境税の創設で、横浜市民は環境を守るための税を三重に負担することになる。同市の林文子市長は十一月二十二日の会見で、「国は丁寧な説明をしてもらわないと困る」と、拙速な議論に懸念を示した。

 確かに、日本の各地で伐採期を迎えたスギやヒノキの多くが放置され、山林が荒廃しているのは大きな問題だ。災害防止の観点からも、山林整備を行政が支援する意義はある。

 しかし、中部地方の自治体関係者は「所有者が分からない森林もあり、整備が遅れている」と話す。森林整備のための税金を導入した自治体の中には、整備が順調に進まず、集めた税金を基金に積み上げているところもあるという。「道路特定財源」のように、使い道を限定した特定財源はこれまでも、無駄遣いの温床として問題となってきた。

 浦野広明・立正大客員教授(税理士)は「森林の荒廃はこれまでの政治の失敗でもある。一律千円の課税だと低所得者ほど負担が重くなる。拙速な庶民増税でまかなうのは問題だ」と指摘。神奈川大の青木宗明教授(租税論)も「特定の目的を掲げて、個人住民税を一律に上げる流れが当たり前になれば大問題だ。『みんなの利益になるから均等に負担をする』という理屈は、教育や貧困対策など何にでも当てはまる」と警鐘を鳴らしている。

 

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