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【経済】

日欧EPA・TPP政府試算 経済効果13兆円見込む

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 政府は二十一日、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)と米国を除いた環太平洋連携協定(TPP)の参加十一カ国による新協定が発効すれば、日本の実質国内総生産(GDP)を合計で2・48%、額にして十三兆円分、押し上げるとの試算を発表した。農林水産物は国内生産額は減少するが、体質強化策などで農家の所得は維持されるとの見通しを示した。ただ、いずれの試算も識者からは「恣意(しい)的な前提を置いている」との指摘が上がっている。 (矢野修平)

 日欧EPAは実質GDP0・99%分の約五兆二千億円押し上げ、雇用も約二十九万人増やすと見積もった。「TPP11」は、新興国で未整備だった税関手続きの簡素化などによる貿易コスト削減の影響が大きく、GDPを1・49%分の約七兆八千億円押し上げ、雇用を約四十六万人創出すると推計した。

 試算は、協定発効から十〜二十年を経て関税引き下げなどの効果が十分に表れた時点で、発効しない場合との押し上げ率の差を算出した。世界的に活用されている「GTAP」というモデルを用いており、貿易活性化に伴い、雇用が国際競争力の低い分野から競争力の高い分野に移り、生産性が全般に向上することも織り込んでいる。

 この算出手法について東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「生産性向上などの間接的な効果は恣意的に操作でき、水増しができる」と批判する。政府によると、関税の引き下げで輸入品の価格が下がり消費が増えるなど直接的な効果だけでは、いずれの協定も押し上げ率は半減するという。

 一方、農産品の影響試算は、安い輸入品が増えることで国産の価格も下落し、国内の生産額が日欧EPAで最大千百億円、TPP11で最大千五百億円減少すると分析した。両協定とも発効した場合はそれぞれの協定内の産品が日本市場で競合するため、影響額は単純合算より小さくなるという。

 この試算は農林水産省独自の手法で分析しており、有識者の検証も行っていない。農水省はTPP交渉参加前には農産品生産の減少額として三兆円という見積りを公表しており、今回の試算の根拠にも疑問が残る。

 宮城大の大泉一貫名誉教授(農業経営学)は「農家の戸数減などの現実を踏まえておらず、影響額が本当になるかは分からない。試算というより『農家は安心してほしい』という政策的なメッセージだ」と指摘する。

 

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