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【経済】

不正の背景 解明されず 神鋼報告書 信頼回復へ険しい道

<解説> 神戸製鋼所が品質データ改ざん問題の原因や再発防止策を盛り込んだ最終報告書を公表した。報告書は不正がさまざまな部門や子会社であった様子を明らかにしたが、なぜ長期間にわたり各地で類似の不正が起きたかは解明されなかった。不正を繰り返す組織風土の改善は容易ではなく、信頼回復への道のりは険しい。

 報告書によると、アルミ・銅事業部門だけでも、真岡製造所(栃木県真岡市)では遅くとも一九七〇年代以降、長府製造所(山口県下関市)では七〇年代後半以降、大安工場(現大安製造所、三重県いなべ市)では八二年または八三年ごろから、顧客仕様を満たさない製品を合格品として出荷させる不正が発生していた。真岡製造所には不正の方法を記した「マニュアル」もあった。

 だが、各地で同様の不正が相次いで発生した背景は判然としない。六日の記者会見では「本社からの指示や組織的な関与があったのではないか」との質問も出たが、川崎博也会長兼社長は「各拠点で(不正の始まった)時期は異なる。誰かの指示で起きたとは考えていない」と組織的関与を否定。報告書も「根深い問題」と組織風土などを問題視する内容にとどまった。

 神戸製鋼は総会屋への利益供与など九〇年代から不祥事を繰り返し、そのたびに対策を打ち出してきたが組織が抜本的に改善することはなかった。不正の根を今度こそ絶つことができるのか。取り組みに向けられる目はこれまで以上に厳しくなる。 (木村留美)

◆神戸製鋼所報告書の要旨 

 神戸製鋼所の最終報告書の要旨は次の通り。

 【事実関係】

 一、不適合製品の納入先は昨年十月二十六日に公表した延べ五百二十五社に加え、同日設置した外部調査委員会の調査で新たに延べ百六十三社が判明した。

 一、顧客仕様を満たさない検査結果について満たす数値に改ざんする行為、測定したかのように試験結果を捏造(ねつぞう)する行為などが確認された。

 一、アルミニウム・銅事業部門では、役員二人が工場勤務当時に不適切行為の存在を認識しており、ほかの役員一人も昨年四月に認識した。過去の役員二人は役員就任以前に直接関与していた。

 一、アルミ・銅事業部門の真岡製造所では遅くとも一九七〇年代から不適切行為が行われていた。

 一、アルミ・銅事業部門のグループ会社では、実測データなどを記録した「トクサイリスト」を参照して顧客仕様を満たす検査結果を証明書に記入していた。

 【原因分析】

 一、本社の収益評価に偏った経営姿勢に従い、各事業部門は工程能力を十分に検証することなく受注するといった生産至上主義に陥った。経営陣が抜本的な対応を行わず、事業部門内の監査も行き届いていなかった。

 一、人事異動がほとんど存在しない閉鎖的な組織、顧客仕様を逸脱しても一定程度なら出荷しても構わないといった誤った考え方が動機となり、不適切行為を継続させる要因となった。

 一、改ざん、捏造を可能とする検査プロセス、単独かつ固定化した業務体制、順守が困難な社内規格の設定があった。

 【再発防止策】

 一、社外取締役を三分の一以上とする。会長職を廃止して、社外取締役の中から議長を選出し、任意の諮問機関である指名・報酬委員会を設置する。コンプライアンスと品質を総括する取締役をそれぞれ配置する。

 一、品質保証人材を全社共通の専門人材と位置づけ、事業部門・事業所間を横断したローテーションや育成を行う。

 一、試験・検査記録の自動化を進め、データ入力の一人作業をできるだけなくす。新規受注時の承認プロセスを見直す。

 【おわりに】

 一、コンプライアンス体制のみならず、組織風土や役員・社員の意識の面で根深い問題を抱えている。信頼を失ったことは痛恨の極みで、不退転の決意で再発防止に努める。

 

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