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【経済】

<原発のない国へ 福島からの風> 飯舘電力 ブランド牛復活へ

牛舎に隣接する太陽光発電所。この下で牧草を育てる=福島県飯舘村で

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 東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の被害を受けた福島県飯舘村で、太陽光発電と農業を同時に行う「ソーラーシェアリング」によって地域の復興に取り組んでいるのが発電会社「飯舘電力」だ。社長の小林稔さん(65)は四月上旬、東日本大震災後、自宅の牛舎に初めて黒毛和牛の若牛を迎え入れた。「飯舘牛」の和牛ブランド復活を目指すと同時に本格的なソーラーシェアを確立し、農業と発電産業による雇用創出を目指す。 (池尾伸一)

 太陽光発電の隣に新築したばかりの牛舎。小林さんに縄を引かれ、若い黒毛和牛が次々とトラックから下りてきた。県内の市場で競り落とした四頭だ。「いい牛が手に入ってよかった。立派な飯舘牛に育ててみせるよ」。小林さんは緊張気味だ。

 飯舘村は震災前、飯舘牛ブランドの和牛の名産地として知られた。だが放射能汚染で村民全員が避難。昨年春に避難指示が解かれたが六千人の住民のうち、六百人しか村に戻ってきていない。小林さんらの飯舘電力は、放置された農地を借りて小規模な太陽光発電所を次々と建設。村民に収入をもたらしている。

再建した牛舎に震災後初めて若牛を迎え入れた飯舘電力社長の小林稔さん=福島県飯舘村で

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 しかし、かつて二百戸以上の育牛農家がひしめいた村の基幹産業の畜産は、ほぼ壊滅状態にある。震災前は肥育農家だった小林さんも、拠点は宮城県の知人のもとに移していた。こうした中、小林さんは率先して村で牛を育てることで、和牛産業の復活につなげる決断をした。

 一頭の体重は三百キロ。「これが二十カ月で六百キロ以上になるんだ」と小林さん。村内の放射能の除染は済んでいるが、汚染の可能性を排除するため最大限の努力をしている。牛舎は新築、エサは風評の影響を考慮して村外で買ってきた牧草を食べさせている。

 しかし、いずれは牛舎の隣の太陽光パネルの下で育つ牧草を食べさせる予定だ。「牛舎の空調や暖房も太陽光発電で賄いたい」という。ソーラーシェアで農業と売電の二つの収入を得るモデルを示せれば、農業収入だけでは厳しい被災地の農業に、新しい姿を示すことができると考えるためだ。

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 「飯舘村を巡る環境は厳しく、何をやっても無駄だという人もいる。しかしオレはそうは思わないんだな」。小林さんは自らに言い聞かせるように語った。 (「原発のない国へ 福島からの風」は随時掲載します)

<飯舘電力> 農地が放射能で汚染され、農業をすることが難しくなった飯舘村の復興に役立てようと、「和牛育成一筋」だった小林稔さんが主導、村民も出資して2014年に設立した電力会社。農家から借りた農地の上に太陽光パネルを設置し発電している。パネルの下では牧草などを育て収入を得る「ソーラーシェアリング方式」を採用。村内に発電所は31カ所ある。

 

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