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【経済】

中小経営者の「本音」働き方座談会 3.11を機に脱下請け/裁量労働制が一番問題

働き方について話す(左から)林哲也氏、山下奈々子氏、吉本英治氏、藤浦隆英氏=東京都千代田区で

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 「働き方」関連法案を巡り、中小企業の経営者四人が意見を交わした。法案に批判的な意見があった一方で、従業員一人一人の状況を把握できる中小企業こそ柔軟な働き方を実現できるという前向きな提言も出された。座談会での主なやりとりは次の通り。

■残業

 吉本英治氏 東日本大震災のとき、福島県出身の社員が実家の親と連絡が取れなくなり、一週間の休暇を申請してきたことがあった。休んでもらうのが当然だが、彼が担当する取引先が「納期があるので、絶対に来てほしい。休むならお金は払えない」と言ってきた。怒りですぐにこの会社との契約を取りやめた。

 この時の経験が、脱下請けに向かうきっかけになった。このままでは働き方が縛られ、社員の生活を守れないからだ。一時は売り上げが減ったが、研究機関や公的機関から直接の受注を増やし、三年ぐらいかけて下請けの仕事をなくした。

 藤浦隆英氏 大企業が残業を減らすと、下請けにしわ寄せがくるだろう。さらに大企業が同一労働同一賃金を進める場合、非正規従業員の賃上げをして人件費が増えるのを避けるため、非正規を減らし、その仕事を下請けに回す流れが出てくるかもしれない。仕事につながる部分もあるが、「働き方改革」が中小の残業削減を難しくしている。

■現実

 林哲也氏 中小企業の経営者は、労働条件を巡る時代の変化を理解しないといけない。今の無知が将来のあだになりかねない。

 藤浦氏 社内の体制の問題がある。(労働条件などを定めた)就業規則をしっかりと作っている企業は、中小では本当に少ない。ちゃんと機能する内容だと、全体の一割もないと思う。「有給休暇の条文を社員に見せたくない」という考え方の経営者もいる。

 林氏 大企業が強く求めた裁量労働制の対象拡大が、一番の問題だったと思う。一部の中小では従業員をさんざん働かせて残業代も払わないなど、いいかげんな対応も目立つからだ。政府は、最低賃金で働く労働者にも裁量労働の適用が可能だとする方針を示していた。今回は延期となったが、将来もし導入されれば、使いたがる中小の経営者はたくさん出るだろう。働く人にとっての悲劇につながりかねない。

 山下奈々子氏 ウチでやっている翻訳のチェックは納期に向かって仕事を進める形なので、裁量労働で自分のペースで仕事ができれば、従業員にとってメリットはあるかもしれない。ただ仕事の分量を間違えてはいけない。管理しきれなくなる恐れがある。

■変わる

 林氏 残業時間が月六十時間を超えたら残業代を50%割り増しする制度が、中小企業でも二〇二三年から適用される見通しだが、多くの経営者がこの衝撃を分かっていない。一番の基本の労働時間の管理を中小企業でもきちんとしておかないと、経営が大変なことになる。残業の問題を隠してあいまいにする企業と、真剣に見直す企業にくっきりと分かれる時代がくる。

 山下氏 多様な人材が活躍できるような体制を整えることが大事だ。(八時間働けない人のために)時給制の正社員という制度を取り入れている。納期が迫っている仕事は頼めないが、緊急性は低くても大事な仕事もある。このほか在宅勤務などいろいろな働き方を用意できないと、人手不足の中で中小企業は人材を確保できない。

 吉本氏 経営者と従業員が毎日顔を突き合わせてやりとりする中小企業ならば、大企業にはできないきめ細かな働き方を導入できる。一万人の会社ではできないことも二、三十人なら可能だ。働き方の改革とは結局、会社を改革することなのだと思う。

◇座談会の出席者

林哲也氏 ケアプラン作成「香川県ケアマネジメントセンター」(高松市)

藤浦隆英氏 特定社会保険労務士事務所「レイバーセクション」(東京都江戸川区)

山下奈々子氏 映像翻訳「ワイズ・インフィニティ」(東京都港区)

吉本英治氏 情報システム開発「ユーワークス」(東京都文京区)(五十音順)

 

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