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【経済】

木造ビル 広がるか 国産スギ新建材「CLT」 福島で復興住宅完成

CLTで造られた復興公営住宅=福島県いわき市で(嶋邦夫撮影)

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 福島県いわき市南東部に、国産スギの新パネル建材「CLT」(直交集成板)を活用した国内最大規模の木造三階建て復興公営住宅が今春完成した。CLTは通常の木材より強度が高く、大型建造物にも活用できる。鉄筋コンクリートより断熱性に優れ、国産木材利用の促進にも期待が高まる。高層建築への活用計画も進んでおり、「木造ビル」が広がりそうだ。 (瀬戸勝之)

 「木は温かみを感じる。自分の家にいるようで心が落ち着くね」

 福島第一原発事故の被災地の浪江町に実家がある田澤勝春さん(75)は、木造の復興住宅に四月十八日に夫婦で入居した。木の素材をそのまま生かした壁のある和室がお気に入りだ。鉄筋コンクリートに比べ保温性に優れ、冷暖房代の節約にもつながる。材料のスギは九州などの国産だ。

 三階建てが二棟で計五十七戸。CLTを壁や床など主要部分に使っているのが特徴だ。総工費は約二十二億円。工場でパネル建材をカットし、現場では組み立てるだけ。施工が簡単なため工期が短くできる。この公営住宅も五カ月余りと鉄筋コンクリートの半分程度で完成した。この工法は、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピック選手村の主要施設となる約六千平方メートルの木造平屋建てビレッジプラザに採用される。

 三菱地所は、仙台市内でCLTを使った十階建ての高層マンションを来年二月に完成させる予定だ。課題もある。日本では耐火性や耐震性の基準が海外より厳しく、中高層ビルへの利用に向けてハードルは高い。他の素材との組み合わせなど、さらなる研究開発が必要。また鉄筋などに比べ素材自体は割高なため、コスト削減が必要だ。

 国内では戦後に大量に植えられたスギやヒノキが伐採期を迎えているが、輸入材の流入や木材価格の低迷で林業は衰退が続く。受注企業のプロジェクトチーム代表を務めた会津土建(福島県会津若松市)の菅家洋一社長は「いずれは福島県産木材も使い、林業を核にした地方おこしにつなげたい。木材が豊富な福島をCLTの先進県にしていきたい」と意欲的だ。

<CLT(直交集成板)> クロス・ラミネーテッド・ティンバーの略。複数の木の板を繊維の方向が互い違いになるように重ねて接着した大型パネル建材。1990年代に欧州で開発され、日本では2016年の建築基準法改正で規定が盛り込まれ、建築に利用しやすくなった。強度が高く中高層ビルへの対応も可能。欧米では10階建て以上のビルも建てられている。

複数の板材を重ね合わせたCLT=瀬戸勝之撮影

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