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【経済】

佐川前長官、不起訴へ 説明責任 必要性さらに

佐川宣寿前長官

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 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざんで、大阪地検特捜部が虚偽公文書作成容疑で告発された佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官らを不起訴とする方針を固めたことが十八日、関係者への取材で分かった。売却価格が八億円余り値引きされた問題の背任容疑についても、財務省近畿財務局担当者らの立件を見送る方向で最高検と協議している。 

 財務省は、改ざん当時理財局長だった佐川氏の追加処分のほか、複数の同局幹部を処分する方向で最終調整に入った。改ざんは理財局内部で行われ、佐川氏らが関与したと認定。減給か戒告の懲戒処分を軸に検討し、一部の幹部についてはより重い停職処分とすることも選択肢とする。省内の文書管理を統括する立場にあった岡本薫明(しげあき)前官房長(現主計局長)の監督責任も明確にする見通しだ。

 不起訴の場合、市民団体などは検察審査会に審査を申し立てるとみられる。

 改ざんは昨年二月下旬〜四月、決裁文書十四件で行われた。安倍昭恵首相夫人や複数の政治家についての記述、土地取引を巡る「特例的な内容」や「本件の特殊性」といった文言が削除された。特捜部は佐川氏らへの任意聴取を進めたが、交渉過程や契約内容など根幹部分には大きな変更がなく、文書が虚偽の内容になったとは言えず、立件は困難と判断したもようだ。

 大阪府豊中市の国有地を約八億二千万円値引きして売却した問題では、近畿財務局担当者らへの背任容疑の告発を受けて捜査してきた。値引きの根拠になったのは国有地の地中で見つかったごみの撤去費だった。

 背任罪の立件には、自身や学園のために任務に背く行為をして国に損害を与えたとの立証が必要。特捜部は撤去費の算出方法に明確なルールはなく、担当者らに裁量を逸脱するまでの行為は認められないとみているもようだ。一方、財務省は改ざん経緯を検証した調査結果と合わせ、月内にも処分を公表する方針だ。

 佐川氏は国有地売却を巡る答弁で国会審議を混乱させたなどとして、三月九日に減給20%・三カ月の懲戒処分を受け、同日付で国税庁長官を辞任した。財務省はその後の調査で、佐川氏が理財局のトップとして改ざんを認識していたと判断。「懲戒処分相当」と認定し、支払いを保留している約五千万円の退職金を減額することなどを検討するとみられる。

◆国会で全容解明を

 佐川前国税庁長官が刑事責任を追及されない可能性が高くなった。だが、違法性を問われなくても、公文書改ざんという民主主義の根幹を揺るがした問題に対する佐川氏の責任は残る。三月に行われた証人喚問で佐川氏は「刑事訴追の恐れがある」として証言拒否を連発したが、その根拠が失われれば、佐川氏の説明責任はますます高まることになる。

 財務省から「(改ざんへの)関与の度合いが高い」とされた佐川氏は三月に辞職した後、衆参両院の証人喚問を含め改ざんの経緯について全く語っていない。佐川氏が不起訴になれば法廷での真相解明ができなくなる。財務省が佐川氏ら関係幹部の処分を行えば、問題がうやむやになりかねない。

 刑事責任を問われなくても、公文書の改ざんは「歴史を変え、政策の検証もできなくなる異常事態」(公文書管理委員会委員の三宅弘弁護士)として、その罪は大きい。佐川氏が「廃棄した」と国会で説明してきた財務省と森友学園の交渉記録の存在も判明し、新たな疑惑も浮上している。

 一方、財務省は現在、改ざん問題の原因を調査中だが、結果の信頼性はあまり期待できない。文書改ざんの後に発覚した福田淳一前次官のセクハラ問題では身内への調査に対して甘い姿勢を露呈した。

 納得のいく説明がされない限り、政府への信頼は回復しない。捜査の行方に左右されず、佐川氏に説明責任を果たさせ、森友問題の全容を解明する調査の場を政府や国会で設ける必要がある。 (桐山純平)

 

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