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【経済】

「貿易戦争」懸念 米、融和一変 強硬路線に

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 【ワシントン=白石亘】トランプ米政権が中国製品に制裁関税を課すと発表し、米中の「貿易戦争」が現実味を帯びてきた。中間選挙をにらみ、トランプ政権内で強硬派が台頭し、対中圧力を一気に強めている。実際に関税を発動する三週間後まで、神経戦が続くとみられるが、マイナスの影響を受ける米国の経済界からは懸念の声が相次いだ。

 「シリコンバレーにはすばらしい頭脳があるが、中国は秘密を盗んでいる」。トランプ大統領は十五日、米FOXニュースにこう語り、知的財産権の侵害に対する制裁関税を正当化した。

 米中は五月から貿易協議を続け、ムニューシン財務長官がいったんは「関税は当面、保留する」と宣言。中国が七百億ドル(約七兆七千億円)の米国製品を買う大型商談も進んでいたが、今回の措置で白紙に戻った。

 米メディアによると、今回の関税措置に対中融和派とされるムニューシン氏は反対したが、受け入れられなかった。政権内では、強硬派のライトハイザー通商代表部(USTR)代表が貿易問題で実権を握り、タカ派色が強まっている。

 トランプ氏にすれば十一月の中間選挙に向け、中国に一歩も引かないタフな姿勢を示し、有権者にアピールする狙いがある。米政府高官は「中国の国営企業が政府の資金で米国企業を買収するのは資本主義ではない」としており、中国への「二の矢」として、米国のハイテク企業を買収する中国企業に対する投資制限を六月末までにまとめ、さらに圧力を強める。

 もう一つの背景には、十二日に北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と首脳会談を実現させたことがある。ロイター通信が米政府高官の話として伝えたところでは、トランプ氏は北への影響力を理由に、貿易問題で中国に配慮する必要性が薄れたと考えているという。

 一方で、中国から譲歩を引きだそうとするしたたかさもうかがえる。制裁関税はただちに発動せず、第一弾の三百四十億ドル分は三週間後の七月六日からと、あえて時間的な猶予を残した。トランプ氏は十五日、中国を批判したが「習近平(しゅうきんぺい)主席は偉大で、すばらしい人物だ」と付け加えることも忘れなかった。習氏の要請で中国の通信大手、中興通訊(ZTE)の制裁を解除するなど首脳同士のパイプもある。水面下で交渉が続くとみる向きは多い。

 世界一、二位の経済大国が貿易戦争に突入しかねない現状は、経済に明らかにマイナスだ。十五日のニューヨーク株式市場では、ダウ工業株三十種平均が四日続落。シカゴ穀物市場でも中国が報復の標的とする大豆が大幅に下落した。

 米国商工会議所のドナヒュー会頭は「関税で中国の不公平な貿易慣行のコストを、米国の消費者らに負担させるのは正しいやり方でない」と懸念を表明。また鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に続く対中関税で、四万五千人の職が失われるとする米シンクタンクの試算もある。

◆中、「製造強国」戦略譲れず

 【北京=安藤淳】中国が米国との貿易交渉で強硬姿勢を崩さないのは、ハイテク産業を育成するために二〇一五年に打ち出した国家産業戦略「中国製造2025」が狙い撃ちされているためだ。

 米国は、中国が外国企業に技術移転を強要したり、ハイテク分野で成長する国有企業などに補助金を出したりして競争をゆがめていると主張する。

 しかし、長期政権とともに、技術革新による産業の高度化で世界一の「製造強国」を目指す習近平(しゅうきんぺい)国家主席にとって、高らかに掲げた政策の旗を降ろすことはできない。またトランプ米大統領が「中国との貿易を考える時、北朝鮮との問題でどうわれわれを助けてくれるかも考慮する」と述べたことや、対中貿易赤字を年間二千億ドル(約二十二兆円)減らすなど現実離れした要求を繰り返していることへの不信感は根強い。米国に屈したとの印象が広がれば習氏の求心力も低下しかねない。

 国営新華社通信は十六日の評論で「(米国は)痛みを感じることなしには、道理を欠いた行動をやめない。力強い反撃を加える」と報復を正当化。「賢者は橋を造り、愚者は壁を造る」とトランプ氏を皮肉った。

 ただ、中国はインフラ投資や消費が減速し始めており、報復の応酬が続けば経済が悪化する恐れもある。

 

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