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【経済】

<原発のない国へ 福島からの風>太陽+風→安定供給 政府は送電線開放渋る

海風を受けて回転する「万葉の里風力発電所」の4基の風車=南相馬市鹿島で

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 東京電力福島第一原発事故から七年が過ぎた福島県で風力発電所が続々と稼働しようとしている。自然のパワーを総動員し「二〇四〇年までに再生可能エネルギーで県内に100%のエネルギーを供給」を目指す福島県。だが目標の達成には課題もある。

 海風を受け銀色の羽根がゆっくり回転している。高さ百三十一メートル、羽根の直径は九十二メートル。日立グループや地元企業が四月、福島県南相馬市の海岸付近に三十億円をかけ完成させた「万葉の里風力発電所」だ。「浜通り」と呼ばれる福島県東部最大の風力発電所となる。

 「原発がなくたってちゃんと電気が供給できることを証明したかった」。出資する地元企業、石川建設工業の石川俊社長(57)は言う。津波と原発事故による放射能汚染が襲った南相馬市。六万人が避難を余儀なくされ、今も一万五千人が故郷を離れたままだ。

 完成した四基の風車は計九千四百キロワットの電気を生み出し四千五百世帯分を供給。収益は植樹や祭りの復興など地元にも還元する。周辺にあった集落は津波で壊滅。市有地となった広大なさら地には太陽光パネルも建てられ、一帯は再生エネ発電基地の様相だ。

 隣の飯舘村でも風力発電の起工式が四月に開かれた。村と東京の電気設備会社が出資し高さ百五十メートルの風車二基を十八億円かけて建設。来年春に発電を始め、村は収益を復興に使う。

 ユニークなのは同じ敷地の太陽光パネルと送電線を共有する「クロス発電」の仕組み。「太陽の光が減る雨のときや夜も風力なら発電できる。供給が安定し送電線も有効活用できる」(飯舘村総務課)という。

 四〇年までに県内の全エネルギー需要を再生エネで満たす目標を掲げる福島県。太陽光発電が先行してきたが、環境調査に時間がかかる風力発電も立ち上がってきた。太陽光、風力、バイオマスなど各種の発電源が補完し合うことで電気の供給が安定するという。

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 県は風がよく吹く阿武隈山地に風車が集中する「ウインドファーム」もつくる計画で事業者を選定中。数年内に百七十基の風車が立ち並ぶ光景が出現する見通しだ。東電が福島第一原発に続き第二原発の廃炉を決めたことで送電線の「空き」が広がり、東京などに電気を送りやすくなる。

 ただ政府や大手電力は原発再稼働を優先し送電線を再生エネに開放することには慎重だ。県西部の会津地域では東北電力が「送電線はいっぱい」と主張。風力発電や大規模太陽光発電は新設できず、地元の新電力会社は頭を抱えている。

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「福島は風も水力も豊か。再生エネの先進地になる潜在性が十分あるのに、このままでは『100%』の達成は困難。送電枠の開放や地元の発電会社支援に国や県はもっと力を入れるべきだ」と指摘する。 (池尾伸一)

<福島県と再生エネ目標> 福島県は「再生エネ100%」の目標達成のため、大手電力の送電線に接続するまでの送電線建設や再生エネ導入事業への補助金を出す。2016度実績(設備容量)では太陽光92万キロワット、風力17万キロワット、バイオマス20万キロワットなどで再生エネ比率は28・2%。東日本震災前から約7ポイント上昇した。「18年度に30%」の中間目標は達成できる見通し。

 

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