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【経済】

米中衝突、追加関税発動 世界経済へ懸念高まる

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 【ワシントン=白石亘、北京=安藤淳】トランプ米政権は六日未明(日本時間同日午後)、知的財産権の侵害を理由に年間で三百四十億ドル(約三兆七千億円)相当の中国からの輸入品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動、これを受けた中国も同規模の対米報復関税を発動し、世界貿易機関(WTO)にも提訴した。米中が制裁と報復を繰り返す「貿易戦争」に突入し、世界経済への懸念が高まっている。

 米国は中国が産業振興に力をいれるハイテク製品など八百十八品目、中国は米政権与党・共和党の支持基盤が主な産地となる大豆や豚肉など五百四十五品目を制裁対象に選んだ。

 トランプ氏は五日、第二弾の発動時期を「二週間後」と言及。対中制裁の対象を中国からの輸入総額に匹敵する五千億ドル(五十五兆円)超に拡大する可能性も示唆した。

 これに対し、中国外務省の陸慷(りくこう)報道局長は六日午後の記者会見で「米国は全世界の貿易秩序に打撃を与え市場の動揺を引き起こした」と強く批判。「いかなる一方的な圧力も徒労に終わる。中国は不公平な待遇を受けた時は当然、必要な反撃をする」とさらなる報復を警告した。

 米国は三月、鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限を発動。対象国は当初の日本や中国などから、欧州連合(EU)やカナダに広がり、各国が米国への報復に動くなど保護主義的な動きが広がっている。

◆報復の連鎖、歯止めを 経済部次長・斉場保伸

<解説> トランプ米大統領が就任してからわずか一年半で、世界一位と二位の巨大な経済規模を持つ米中が関税を巡って対立する「貿易戦争」が現実になった。両国は第二弾の報復も表明。米国が模範を示し、ただひたすらに自由貿易の理想に突き進んできた時代は終わりを迎えた。

 トランプ氏の成果を問う中間選挙は十一月に迫り、「米国第一」政策は、想像以上のスピードで世界貿易の姿を変えつつある。トランプ氏が勝利する大統領選から約一年前の一五年十月、米南部アトランタ。ギリギリの交渉でまとまった環太平洋連携協定(TPP)参加十二カ国の記者会見場は、高揚感に包まれていた。

 原則的にすべての関税を撤廃する−。TPPはこんな自由貿易の理念を掲げた。甘利明TPP担当相(当時)は「この十二カ国のルールは二十一世紀の世界のルールになっていく」と宣言。むしろ「弱肉強食」の自由貿易の行きすぎが懸念材料だった。

 でも今、世界には「ルール」とは真逆のトランプ氏を中心とした「ディール(取引)」が広がる。報復が報復を呼び、二つの経済大国が関税という貿易の「壁」を高め合う。自由貿易によって、安くて品質の高いモノが国境を越えて移動することで成り立ってきた世界の経済はその勢いをそがれる。部品の移動が妨げられれば製造業はものづくりが難しくなり、食料品も、消費者はこれまでのような価格で手に入れられなくなるだろう。

 消費者も企業も皆が痛手をこうむる。だから「貿易戦争に勝者はない」といわれる。米国の象徴である米オートバイ大手のハーレーダビッドソン。欧州連合(EU)による米国への報復関税を避けるために、米国内の生産の一部を国外に移す。トランプ氏の強硬策が、自身の重視する米国内の雇用を失うことになるのは皮肉だ。消費者を「敗者」にする政策は進まないことに、トランプ氏は気付くべきだ。 (元アメリカ総局長)

 

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