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【経済】

増えぬ賃金、ため込む企業 危機への備え最優先

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 リーマン・ショック直後に大幅に落ち込んだ先進国の賃金上昇率は一向に回復していない。日本企業も業績が改善しても、会社は次の危機に備え現預金をためこむばかりで、従業員の賃金にもうけを振り向けない守りの経営が続いている。

 国際通貨基金(IMF)の調査によると、米国や欧州を含む先進国(三十カ国)の賃金上昇率はショックの影響を大きく受けた。二〇〇五〜〇八年の賃金上昇率の平均は2・8〜3・7%と推移していたものの、〇九年には1・4%まで低下。その後、金融危機から脱して企業業績が上向いても、伸び率の水準は低いままだ。

 賃金上昇率が回復しない理由について、野村マネジメント・スクールの森健氏はリーマン・ショック後に「企業が『危機に備える必要がある』とマインドセット(考え方)を変えたことにある」と説明する。トヨタ自動車ですら渡辺捷昭(かつあき)社長(当時)が「かつてない緊急事態に直面している」と口にしたほどだ。優良な大企業であっても資金繰りに苦労したため、万が一の備えを最重視する経営が今でもはびこる。

 企業が危機の備えを最優先しているのは、財務省の法人企業統計からも明らかだ。〇八年度から一七年度の十年間で、企業の純利益は八・三倍に増えたものの、従業員の給与は5%程度しか増えていない。その代わり、一七年度の国内企業が保有する現預金は約二百二十一兆円と十年間で一・五五倍まで膨らみ過去最大となった。

 リーマン・ショックの影響で経済自体の構造が大きく変わったことも、賃金が伸びない一因との見方もある。「(商品やサービスの)価格を上げられなくなり、企業はコストを下げる必要に迫られた」と日本総研の山田久氏。「従来の小売業界がアマゾンに顧客を奪われ競争が厳しくなるなどさまざまな市場がショック後に急速に変化し、賃金は抑制された」とも指摘し、今後も賃金が上がりづらい傾向が続くと予想している。 (木村留美)

 

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