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【経済】

KYB免震・制振装置 改ざん 検査データ 986件、15年以上

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 油圧機器メーカーのKYBは十六日、都内で記者会見し、地震時にビルの揺れを抑える免震・制振装置の検査データを十五年以上にわたり改ざんしていたと発表した。改ざんの疑いのあるものを含めると、全国のマンションや病院、自治体庁舎など計九百八十六件の建造物で使われていた。改ざんされた装置は交換する。一部の建造物はその際に利用できなくなる可能性がある。 (森本智之)

 KYBは改ざんの幅が大きかった七件について、改ざん前の元の検査数値を検証した結果、震度7程度の大地震でも耐えられるとして納入先の建造物について「耐震性に危機があるとは思っていない」としている。

 KYBは建造物の具体名は「所有者の合意が得られた段階で公表する」として現時点で明らかにしていない。東京スカイツリーにKYBの制振装置が使われているが、「データ改ざんされた装置かは調査中」と述べた。大阪府は府庁本館などで改ざんされた免震装置が使われていると明らかにした。不正品は二つの橋にも使われていた。

 不正が発覚したのは、油圧を利用して揺れを吸収するオイルダンパーと呼ばれる装置。建物の地下部分に使われる免震用と地上部分に使われる制振用がある。

 完成品の性能検査で、揺れを抑える能力が国の認定基準や顧客企業の基準値から外れた場合、検査員が検査機を操作して基準内に収まるよう数値を改ざんしていた。本来は分解して製品を再調整しなければならないが、検査担当者らは「時間を省くために行った」と、社内調査に証言した。

 不正はKYBの岐阜南工場(岐阜県可児市)で免震・制振装置を製造していた二〇〇三年から始まり、〇七年に子会社の津市の工場に製造が移った後も続けられた。今年八月にこの子会社の組み立て部門の社員の指摘で発覚するまで続いていた。

 子会社に製造が移る際に検査員は全て入れ替わったが、KYBから引き継ぎ研修の際に改ざんの手法が伝えられた。この間に検査を担当した八人全員が不正に関わっていたとみられる。

 KYBは外部調査委員会を設置し、不正をだれが指示していたかなど責任や原因を究明する。中島康輔会長兼社長は「対策を取った上で経営責任を果たす」と現時点での引責辞任は否定した。国土交通省は免震装置メーカー八十八社を対象に改ざんがなかったかを一斉調査する方針を表明。年内に報告を求める。KYBには原因究明と再発防止を指示した。 

◆スカイツリー「確認中」

 東京スカイツリーを運営する東武タワースカイツリーの広報担当者は「スカイツリーの心柱の制振システムにKYBの装置が使われているのは事実。不適合の対象としている製品か確認中」としている。

<KYB> 1919年に東京都で創業した油圧機器メーカー。東京証券取引所第1部上場で、2005年10月から「カヤバ工業」の通称として「KYB」を用い、15年10月に社名を正式変更。主に自動車や鉄道向けに油圧で振動を抑える部品などを製造、販売する。18年3月期の連結売上高は3923億円。18年3月末のグループ従業員数は約1万4800人。

<免震・制振オイルダンパー> 油の粘性を利用し、地震の際に建物の揺れを抑制する装置。免震用は建物の地下階などに設置し、装置が伸縮することで地震のエネルギーを吸収する。制振用は地上階に据え付け各階の変形を抑えることで建物全体の揺れを少なくする。

 

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