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【経済】

経団連「大学教育のあり方」年内まとめ 新卒一括見直し

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 政府は大学生の就活日程の維持を決める一方、未来投資会議では、新卒一括採用そのものを見直す議論を始めた。十月の会議で経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は大学教育のあり方に関し、年内に経団連としての提言をまとめる方針を表明。だが大学側から会議に出席したのは東京大の五神真(ごのかみまこと)学長だけで、政府と大企業が大学への「圧力」を強める構図が鮮明だ。

 政府が公開した十月二十二日の未来投資会議の議事要旨によると、経団連の中西氏は「大学教育のこれまでのプロセスに大きな見直しが必要ではないか。いろいろ要請はある」と発言。

 さらに「企業から見た『こういうことをしっかり勉強してほしい』というメッセージが不足していたと強く反省している」とも述べ、経団連の提言について「どこかの機会で議論させていただけるよう、お願いしたい」と念を押した。

 これに対し五神氏は「新卒採用のあり方は大学の教育改革と大きく関係していると認識している」と応じ、「大学で身に付けた能力を企業が評価できるようにするための議論の場が必要」と話したが、大卒者の八割近くを輩出する私立大の関係者からは「私大の意見を聞く機会が不可欠だ」との声が出ている。

 中西氏はこれまで大学教育について「新しいニーズに十分応えない、応えられない」「職業とのつながりが希薄」などと指摘。学生には「自分の将来に役立つことを貪欲に勉強してほしい」と要望していた。

◆「就活ルール維持」どう受け止めた

 大学生の就職活動の日程に関し、政府は2021年卒の学生(現在の2年生)まで従来の経団連の日程を維持することを決め、当面はこのスケジュールを維持する方針も表明した。今回の決定を大学側はどう受け止めたのか。将来の就活のあり方についてどんな考えを持っているのか。青山学院大の三木義一学長(68)、同志社大の松岡敬学長(63)に聞いた。 (木村留美、池井戸聡)

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◇青山学院大・三木義一学長

 −政府が定めた新ルールをどう評価しますか。

 「急に変えれば学生は混乱する。現状通りはまずは妥当。その先、どう修正していくかが問題だ」

 −修正する際の不安は。

 「大学一年のときからでも、能力を見込んで早期に学生に手を付けたいという産業界の要望だ。しかしそれが本当に良いことか。学生も企業も冷静に考える必要がある。大学の四年間は卒業後の長い人生を決めていく大事な時期。たくさん本を読むとか、さまざまな経験や勉強をしなければいけない。(就活を早め)学生から学ぶ機会を奪うのは、企業にとっても損失だ」

 −経団連の中西宏明会長は「大学の勉強と職業のつながりが希薄だ」と指摘しています。企業が「即戦力」を大学に求めることについてどう考えますか。

 「かつて日本の企業は資力があって社員を鍛える力があったが力が弱まり、『すぐ使える人を育ててくれ』と、(姿勢が)変わってきたのではないか」

 −新卒一括採用を見直す動きもあります。

 「今の方式が百パーセントいいわけでなく、一括採用が本当に良いかは考えなければいけない。しかし(十月の)政府の未来投資会議で一括採用が取り上げられたのは『突然』という印象だ。私大の関係者が入っていない会議で、学生のあり方が決められようとしているのは問題だ。実情を聞き取るなど、事前の手続きが必要ではないか」

<みき・よしかず> 中央大法学部卒。一橋大大学院法学研究科修士課程修了。立命館大教授などを経て2010年、青山学院大法学部教授。15年12月から現職。東京都出身。

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◇同志社大・松岡敬学長

 −新ルールの評価は。

 「混乱を防ぐ意味ではいいが、ずっと続くかといえば議論のあるところ。国は産業構造の変化などを見据え、どういう人材を育成すべきか示す必要がある」

 −採用の変化も予想されます。大学教育も変わりますか。

 「日本で働きたい留学生も増えている。企業も優秀な人材を採用するために世界を見ていて一括採用は変わっていくと思う。大学としては学生の質を保証し、責任を持って社会に人材を送り出していく」

 −即戦力を求める産業界の要請にどう応えますか。

 「企業は即戦力を意識し優秀な学生を採りたいと言うが、社会で活躍できるのは幅広い知識をベースに知識を展開させることができる人材だ。そのためにはしっかり学ぶ時間が必要。企業も学生をしっかり育てようという感覚になってくれるとありがたい」

 −特に文系の場合、大学院卒が就職活動では有利にならないと言われます。

 「日本は大学院教育を軽視しすぎ。大学院では学問の深掘りの仕方を学ぶ。三年生になると就職活動を意識する学生と比べ、学習の時間が二倍以上ある」

 −将来の就活ルールについてどう思いますか。

 「少子高齢化、産業革命も進む。大学、産業界、国が五年、十年ぐらいかけ考えていけば、教育体制は作り上げられる。産学連携した人材育成を前面に出し、改革していく必要がある」

<まつおか・たかし> 同志社大工学部卒。工学博士。近畿大助教授などを経て1993年、同志社大工学部教授。2016年4月から現職。奈良県出身。

 

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