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【NIE】

<新聞から学んだこと 加藤寛一郎>英字新聞

加藤氏が「記憶に残った英文記事」とした4月23日の東京新聞こども面「世界を読もう」

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 私は英語に強い劣等感を持つ。新入社員のころは社の英検一級の人に頼み、教えを受けた。彼はb、f、l、r、thの発音に注意して、ジャパン・タイムズの社説を毎日、声を出して読むことを勧めた。

 定年後の役所勤めでは外国人と会うことが多く、毎週英会話学校に通った。このときはヘッド・ティーチャーに頼み、通常のテキストは使わないことにした。彼から渡されたのは英字新聞の切り抜き。「予習に毎回四時間かかりますよ」と言われ、事実その通りだった。知らない単語が、ものすごく多かった。授業はまず私が教材を声を出して読み、教師が発音を正し、後は内容を英語で議論した。

 英字新聞の教材は実に面白かった。そのとき使った二百五十枚ほどの切り抜きコピーは、いまも保管している。この欄を書くにあたり、記憶に残る一枚を捜して見つけた。記事の書き出しはアメリカの詩人で短編小説家についてで、「ドロシー・パーカーは、夫を替えるのはなんでもないが、編集者を替えるのは損害が大きいと言っている」だった。

 当時私はエアバスについて調べていて、フランスのトゥールーズにある本社も二度取材に訪れた。『エアバスの真実』(講談社刊)が出版されたとき、私は執筆の機会を与えてくれた編集者を次のようにたたえることにした。「夫を替えるのは容易だが編集者だけは替えられないと言った著名女性作家がいることを承知している」

 その編集者は当時売れっ子で、私の最も恐れる人だった。私はこの方にふさわしい賛辞を英字新聞に見つけたわけである。これを目立たぬように本文中に書き込んだ。拙稿を隅々までは読まないことを知っていたからだ。しかし出版された拙著で、この一文は見事に削除されていた。

 最近記憶に残った英文記事についても書きたい。「国連本部で核禁止条約交渉に参加しなかった日本代表の席に、非政府組織(NGO)が『あなたがここにいてくれたら』と書かれた折り鶴を置いた」という趣旨。出典は四月二十三日の東京新聞こども面「世界を読もう」。この欄は毎週読む。なぜ? 短いのが良い。だって英語は苦手だ。 (東京大名誉教授)

 

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