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【放送芸能】

希望届ける「手紙」に 東野圭吾原作のミュージカル 

 人殺しの弟の人生という重い題材を描いた東野圭吾原作のミュージカル「手紙」が20日から東京・新国立劇場で再演される。昨年1月の初演で、観客の心に深い問いを投げかけたが、2017年版は社会の変容を踏まえ「再演でなく再挑戦」をうたう。新たに主演する柳下大(やなぎしたとも)(28)と演出の藤田俊太郎(36)が今、「観客に届けたいもの」とは−。 (前田朋子)

 「(内容は)重くないんです。1年たって、日本の日常、現実が先に行ってしまった」。藤田は、相模原市の障害者施設で昨年起きた大量殺傷事件などを念頭に厳しい顔を見せる。「とんでもない犯罪がすぐに忘れ去られている。日常そのものが重くて、もう(作品が)重くなくなってしまった」

 物語は両親をなくし、弟の学費のために人を殺してしまう兄と、恋愛や就職などあらゆる局面で差別に遭う弟のつながりを描く。兄の剛志(つよし)を吉原光夫が、弟の直貴(なおき)を柳下と太田基裕がダブルキャストで務める。

 初演では、観客に「自分ならどうするか」を考えてもらおうと、舞台と客席の位置を逆にし、劇場に入った観客はいったん舞台上を通って客席に着くという「変化球」を用意して物議を醸した。しかし今回はオーソドックスな演出を予定。「加害者、被害者、差別意識…。それは当然として、その先の希望をどう描けるか。俳優の身体や歌そのもので勝負したい」と藤田。柳下は「何回も挫折して、あきらめて、その中でも直貴は小さくてうっすらとした光を見続けている。その希望を届けたい」と意欲を燃やす。

 「兄弟が互いに思い合いながらもそれがずれたり、でもやっぱりつながったりする感じがとても好き」と話す柳下は、藤田の演出する本作への出演を熱望。久しぶりのミュージカルに苦手意識もあったというが、ボイストレーニングを半年以上続け、公演に備えた。

 藤田の師に当たる故蜷川幸雄(にながわゆきお)さんとの隠れた縁も後押しした。柳下は5年ほど前、蜷川さんに覚えてもらおうと自費で韓国公演を訪ね、あいさつした。生前の出演はかなわなかったが、この日の出来事を藤田は蜷川さんから聞かされていた。「『わざわざ韓国に来るなんてすごいよなあ、どこ(の事務所)だ、どこだ』って。まっすぐでさわやかな印象があったんでしょう。そのおかげで僕も柳下くんに出会えましたから、蜷川さんに感謝です」

 「藤田さんと一緒にやる以上『ここまでだな』って思われたくない。(歌の準備などは)努力だと思っていません。普通です」ときっぱり語る柳下。「得意分野に逃げない」をモットーにさまざまなジャンルの演劇に挑み、俳優としての幅を広げる。「簡単にできたら面白くない。チャレンジということでは、今年もいいスタートを切れそうです」と目を輝かせた。

 東京公演は2月5日まで。サンライズプロモーション東京=(電)0570・00・3337。

 

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