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【放送芸能】

来月21日、三越劇場90周年 演芸界の長老競演

 ことし開場90周年を迎えた三越劇場(東京都中央区)が来月21日、大御所2人を招き、創立記念の演芸会を開く。題して「90なんてまだ若い! 内海桂子・桂米丸」。90歳を過ぎてなお現役であり続ける2人は、これまでテレビ番組や興行で顔を合わせることはあっても、名前を冠した舞台で競演するのはこれが初めて。2人合わせて186歳!! 演芸界の生けるレジェンドが歴史に新たな1ページを書き加える。 (神野栄子)

 「九十周年ということで若い人では意味がない。九十という数字にこだわると二人しかいなかった」。企画当時、劇場支配人だった小林守さん(52)は明かす。漫才と落語の違いこそあれ、ともに芸歴七十年を超える業界最長老。劇場より年長の二人に白羽の矢を立てた。

 「九十周年がなければ思いつかなかった企画。二人にとって九十なんてまだ若い。今も日々進化する二人が同じ舞台に並ぶ姿を見たいと思った」と演芸プロデューサーの中村真規(まさき)さん(64)は話す。昨年秋に企画を打診すると、桂子さんは「いいわよ」と二つ返事で快諾。しかし、体調に不安があった米丸さんはいったん回答を留保した後、年末に「出演したい」と決意したという。

 ところが、年明けに桂子さんはタクシーから降りようとして転倒、左足の付け根を骨折。周囲をハラハラさせたが、手術とリハビリを経て、今月上旬、浅草東洋館の定席で復活した。

 ♪命とは粋なものだよ 色恋忘れ 意地張りなくなりゃ 石になる〜

 たくましく生きてきた自身の半生をなぞるように、十八番の都々逸を歌う桂子さん。「皆さんの顔を見られただけで生きてたかいがあった」としみじみ語ったと思えば「百まで稼ぐよ!」と威勢のいい桂子節も全開だ。客席から「ウォーッ」と大歓声が上がった。

 十二歳で舞台に立った。一九五〇年に故内海好江さんと結成した「桂子・好江」は半世紀近く、漫才界をけん引してきた。「浪曲は楽屋で師匠方の芸を見て覚えたの。三味線は働きながら習ったんだから」と振り返る。

 今もニュースや時事問題には敏感に反応し、日々、ツイッターで思いを発信している。世相をつかんで、芸に生かそうという貪欲さは衰えない。

 一方の米丸さんも負けていない。昨年、ロボットがドローンに乗ってカレーライスを運ぶ近未来を描いた新作落語「ドローン出前」を発表。「お客さまから時代に合った噺(はなし)で面白かったと言われ、勇気が湧きました」と喜ぶ。

 二十一歳で入門し、創作噺にこだわってきた。これまで作ったのは約二百作。内風呂がない家庭が主流だった時代に爆笑を誘った「もらい風呂」、降雨時に家族が傘を持って駅まで迎えに行く光景を描いた「相合(あいあい)傘」…。世相を反映した噺に客席は大爆笑した。

 七〇年代半ばのヒット映画にあやかった噺「ジョーズ」のように今も口演する一席もある。「顔見たら興ザメだぁ。サメザメ泣いた、なんてね」。柔らかな語り口は客を癒やす。「新ネタを発表する時は学生の試験勉強と同じ、しゃにむに創る。疲れます」

 流行にアンテナを張り巡らす。「流行に早すぎても遅すぎてもだめ。新作は高座にかけているうちに育っていく」。ひと手間を惜しまず、工夫すれば「新作も古典のように、ずっと残る作品になる」。新作落語にこだわってきた七十一年の極意だという。

◆「ねえちゃん」に教わることばかり

<2人と旧知の落語家三遊亭金馬さん(88)の話> 桂子師匠は戦後、地方巡業からのお付き合いで今も「ねえちゃん」と呼んでます。言葉は悪いけど、芸は盗むもの。ねえちゃんは若いときから、人の芸を見て自分のものにしてきた。教わることばかりでした。歌って踊って、芸達者じゃないと生き残れない。そんな厳しさを知っている根っからの芸人。ねえちゃんみたいな芸人はもう出ないね。

 米丸さんとは、私が小金馬のころ、若手落語家6人で「創作落語会」を結成し、切磋琢磨(せっさたくま)した仲。ラジオで毎週、6人の作品を放送していたが、行き詰まると米丸さんと連絡を取り合ってね。新作の勉強をさせてもらったよ。新作一本で71年というのはすごい。私は2人より若い。まだ負けずに寄席で頑張るよ。

◆三越劇場の歴史

 三越劇場は一九二七(昭和二)年、東京・日本橋の三越本店内に「三越ホール」として開場した。当時、百貨店内の劇場は世界でも珍しく、邦楽や日本舞踊など伝統芸能を中心に、歌舞伎も上演。五三年には小説家で劇作家の久保田万太郎(一八八九〜一九六三年)の発案により、日本初のホール落語会「三越落語会」が開催された。落語会は現在も続き、五月二十六日に五百九十七回目を数える。劇場九十周年記念の一環として同二十五日には、テレビプロデューサーで演出家の石井ふく子さん(90)のトークショーが開かれる。

 

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