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【放送芸能】

2時間ドラマ崖っぷち テレビ離れ、習慣変化… 放送枠減少

 最後は断崖絶壁か、ビルの屋上で犯人が自白−。お決まりの展開で人気の2時間ドラマが存続の危機に立たされている。1話完結で、サスペンスやミステリーを楽しめる2時間ドラマだが、春の番組改編でテレビ朝日とテレビ東京が夜の放送枠を相次いで廃止。背景にテレビ離れや視聴習慣の変化があるとはいえ、数々の名作を世に出してきた2時間ドラマが今、まさに崖っぷち!? (砂上麻子)

 二時間ドラマの先駆けは一九七七年に始まったテレ朝の「土曜ワイド劇場」。視聴者が多い午後九〜十一時に放送され、素人探偵が活躍するサスペンスものが好評となった。この成功が刺激となり八〇年代には各局も続々と参戦。九〇年代には20%前後の高視聴率をマークする番組も出た。

 多くの二時間ドラマを手がけてきた「ホリプロ」映像制作本部の川島永次プロデューサー(55)は「犯罪に手を染めるまでの過程を描く人間ドラマの部分と、断崖での告白など視聴者を楽しませるエンターテインメント性がある」と魅力を語る。断崖でのラストシーンのほか、途中から見た視聴者も物語を理解できるよう、番組の中盤で、刑事などが被害者や容疑者の相関図をホワイトボードに書き出す場面を入れるのも定番だ。関係者の間で「十時またぎのホワイトボード」と呼ばれる手法だ。

 一世を風靡(ふうび)した二時間ドラマだが、近年は視聴率が一ケタ台にとどまることも増えた。テレビ局関係者は「視聴者が高齢化し、若い世代に二時間ドラマを見る習慣がない」と嘆く。

 さらに、温泉若女将(おかみ)や地方記者、ツアーコンダクターが名推理で犯人を追いつめる“素人探偵”の設定も時代に合わなくなってきたという。個人情報保護の意識が高まり、視聴者から「個人情報にコンタクトできない素人が捜査できるはずがない」と指摘も出るようになったという。ある制作担当からは「素人探偵が主人公でないと、ストーリーの多様性が作りにくい」とぼやきも漏れる。

 こうした中、日本テレビは二〇〇五年に「火曜サスペンス劇場」を終了。テレ東の「水曜ミステリー9」も今年二月の放送を最後に姿を消した。最も歴史のあるテレ朝の「土曜ワイド劇場」は日曜午前に移り「日曜ワイド」としてリニューアル。新作も制作する予定というが、当面は土曜ワイドの再放送だ。

 各局が二時間ドラマ枠を廃止・移設する中、TBSの「月曜名作劇場」が最後の牙城となっている。編成局の橋本孝担当局長(57)は「コンテンツとしての力はある」と説明する。主な視聴者層である五十代以上は午後十時を過ぎるとテレビを見る割合が減るといい、今年一月から放送開始を午後八時に前倒しした。視聴率は変更前とほぼ同じ9%台を維持しているという。

 橋本局長は「今まで二時間ドラマに出ていない俳優を起用したり、実際の事件をモデルにしたりするなど新しい作風の開発が必要」と指摘する。

◆「必ずテレビに帰ってこい!」船越英一郎 帝王の思い

 「刑事吉永誠一 涙の事件簿」シリーズ(テレ東)や「火災調査官・紅(くれない)蓮次郎」シリーズ(テレ朝)など数多くのサスペンスドラマに出演し「二時間ドラマの帝王」と呼ばれる俳優船越英一郎さん(56)に、二時間ドラマの魅力について聞いた。

 −二時間ドラマの魅力は?

 映画もそうだが、人が集中して心地よく見られる時間が九十分から二時間と言われる。「二時間ドラマ」はエンターテインメントに適した長さだと思う。

 そこに、サスペンスドラマのハラハラドキドキや謎解きの楽しさがある。サスペンスは非日常を描くが、日常をちゃんと描かないと非日常にならない。サスペンスドラマにはホームドラマの要素もある。ドラマのすべての要素が凝縮されている。最高のエンターテインメントだと思う。

 −二時間ドラマと連続ドラマの違いは?

 サスペンスは複雑な話が多いので、分かりやすく見てもらうための工夫が多い。芝居もそう。俳優だから役の人生を生きるのと同時に普段よりもテンションを上げた表現をしてきた。視聴者にストーリーを分かってもらえるよう、オーバーアクション気味の演技が、二時間ドラマには必要なんだろうなと思います。

 −これまで多くの二時間ドラマに出演してきた。

 多い時は一年に十五本ぐらい出演していた。昔は予算や時間に余裕があったので、全国を回った。「こんなところで殺人事件が起きるのか?」と思うような山奥にも行きました。二時間ドラマの楽しみには、犯人捜しとともに旅情があるという人も多いから。

 −これからも二時間ドラマに出演したいか。

 出演し続けたいですね。本当に減ってしまって寂しい。失って初めてどれだけ大きい存在だったか分かることがある。寂しさが視聴者の皆さんの中に出てきたら二時間ドラマがまたテレビに帰ってくる時が来るのではないでしょうか。いや、絶対に来てほしい。

<2時間ドラマのスターたち>

◆警部と運転手 渡瀬恒彦さん

 代表作に「十津川警部」(TBS)、「タクシードライバーの推理日誌」(テレ朝)など。今年3月に亡くなる直前まで「警視庁捜査一課9係」(テレ朝で放送中)への出演を熱望していた。

◆法医学者24年 名取裕子

 代表作「法医学教室の事件ファイル」(テレ朝)は連続ドラマから2時間ドラマに。通算24年も続いたロングヒット作。

◆2時間の女王 片平なぎさ

 人呼んで「2時間ドラマの女王」。代表作に「小京都ミステリー」(日テレ)や「山村美紗サスペンス 赤い霊柩車(れいきゅうしゃ)」(フジ)など。

◆相棒土ワイ発 水谷豊

 刑事杉下右京が活躍する刑事ドラマ「相棒」(テレ朝)はもともと2000年から01年にかけて「土曜ワイド劇場」で単発で放送され、後に連続ドラマに。

 

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