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【放送芸能】

山田洋次監督「家族はつらいよ2」 免許返納、孤独死… ドタバタ劇に

 映画監督山田洋次(85)。この人の本領は喜劇でこそ発揮される。国民的映画「寅(とら)さん」シリーズの終焉(しゅうえん)から約二十年。新たな喜劇シリーズの最新作「家族はつらいよ2」が二十七日に公開される。高齢者の運転免許返納と孤独死という重い社会問題を料理し、たくさん笑えてちょっぴり泣ける作品に仕上げた。 (金森篤史)

 熟年離婚をテーマにした前作(昨年三月公開)に続き、高齢者問題を取り上げた。きっかけはスタッフのひと言だった。「父親が九十歳近くて危ないから運転をやめさせたいが、その話になるとけんかになる」

 監督自身は二年間運転しておらず、もうハンドルを握るつもりもないが、主人公の周造(橋爪功)は違う。家族の心配をよそに運転を続け、トラックに追突。急きょ家族会議を開くことになるが、その朝、ちょっとした事件が起こり、家族八人がドタバタ劇を展開するというストーリーだ。

 事件を起こすのは、周造の高校時代の友人で久しぶりに再会した丸田(小林稔侍)。御曹司で女性にモテたが、離婚や事業の失敗を経験し、アパートで独り暮らしをしている。作品のもう一つのテーマである孤独死を体現する登場人物だ。「彼は毎晩、寝るたびに思う。心臓が止まっても誰も来てくれないと」。監督は独り暮らしの高齢者の不安に思いをはせる。

 「この国は、安心して年を取れなくなっていると言いたかった。核家族化して子どもの世話にならないのが常識になり、だからこそ社会的な保障が必要な時代なのに、その保障がどんどん減らされている」

 ずしんと重い話だが、スクリーンから強く伝わってくるのは、けんかもする家族の絆の大切さだ。「僕の作品を見て、身につまされる思いを観客にも抱いてほしいと思っている。人ごとじゃなくて、何だか自分のことのように思えると」

 前作公開後、「続編を見たい」という声が寄せられた。「『もっと見たい』と言われるのは、作り手として幸せです」と話し、シリーズ次回作についても考え始めている。「いろいろある。(家族を演じる)八人の俳優がこんなふうに結晶を作るんじゃないかとか考えるのが楽しい」

 取材が終わって席を立つ間際、ふっと出た言葉が作品の本質を物語る。「僕が一番いい映画だと思うのは、うちに帰って思わずプッて吹き出すような映画です」

<やまだ・ようじ> 1931年生まれ、大阪府出身。東京大卒。54年、助監督として松竹入社。「男はつらいよ」シリーズや「家族」「幸福の黄色いハンカチ」「学校」「たそがれ清兵衛」などを手掛ける。今作が85作目。2012年、文化勲章受章。

 

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