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【放送芸能】

世界がびっくり 南京玉すだれ 手軽で華麗「クールジャパン」

軽妙なリズムと歌に合わせ、次々とすだれの形を変えていく南京玉すだれの演者たち=神戸市内で

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 ♪あ、さて、あ、さて、あ、さてさてさてさて…。軽妙な口上に合わせ、竹製のすだれが次々と形を変えていく。「南京玉すだれ」で知られる日本伝統の芸能が今、静かなブームになっている。あっと驚く技が割と手軽に身につくとあって健康志向の高齢者に加え、海外赴任するサラリーマンや外国人にも「クールジャパン」と人気だ。隠し芸として習う人も増え、東西を代表する団体ではかつてない盛り上がりを見せている。(神野栄子、藤浪繁雄)

 今月二十一日に神戸市の目抜き通りで行われた「神戸まつり」。カラフルな衣装に身を包んだ百二十五人が「そいや、そいや〜」の掛け声で威勢良くパレードする。手にした玉すだれが一斉に伸び縮みし、ひねられる。「カモメ」や「生田神社の鳥居」「明石大橋」といった技が次々に決まると、沿道からは盛んに拍手が送られた。

 演者は全国の愛好者約二百人が在籍する「日本南京玉すだれ協会」。同協会は神戸市を拠点とする業界最大の団体で、全国約百五十カ所に教室を持ち、生徒は数千人に上るという。

 八房美都香(やつふさみとか)理事長(72)によると、同協会は「外国の人にも楽しんでもらおう」と海外公演も積極的に行っており、玉すだれを「ミラクル・バンブー・ジャグリング」と紹介。釣りざおという技を「フィッシング・ロッド」、鳥居を「ゲート」などと訳して披露する。「みんな驚いてオーッと歓声を上げる。盛り上がり方は世界共通」と八房理事長。最近は、留学や海外赴任、出張を控えた人がよく習いに来るといい「言葉をあまり必要とせず、海外で日本らしさをアピールできる芸として重宝されているのでは」と分析する。

八房美都香(やつふさみとか)理事長

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 東京・両国の江戸東京博物館で今月十五日に開かれた「玉すだれ博覧会」には全国二十六の団体・個人が出演した。「鳥居」や「しだれ柳」といった技の呼び名はほぼ全国共通。「魚(うお)釣りざお」や「橋」は地域によって微妙に名称が変化する。東京では「日本橋」だが、関西では「瀬田の唐橋」といった具合だ。

 博覧会を主催した一般社団法人「大江戸玉すだれ」(東京)は、団体の名称に「南京」を付けない。一九九三年に旗揚げし、約百人の会員を抱える関東を代表する流派だが、佃川燕也(つくだがわえんや)理事長(64)は「玉すだれの芸は日本発祥。中国・南京から伝わったわけではない」と説明する。佃川理事長は、お座敷で培われた江戸の粋が持ち味とアピールする。

 同法人が首都圏五カ所で開く教室には、高齢者の入会が増えている。「三カ月で技を習得でき、指先を使うから老化防止にもなる。人を喜ばせることもでき、それが生きがいになっている」と佃川理事長は人気を分析する。

 盛り上がりを見せる玉すだれ業界だが、一方で、玉すだれに適した節(ふし)のない竹が年々入手困難になるなど、不安材料もある。埼玉県秩父市の玉すだれ職人山本博巳さん(67)は「職人も減っているし、竹を切り出す人材も高齢化している」と危機感を抱く。竹林の荒廃などで竹の確保が難しくなっているといい、輸入材で作った玉すだれも見かけるという。「国産材の方が質が良く、自分は輸入材は一切使わない。国産材が手に入らず、作れないときもある」と嘆く。

◆客席が柔らかくなる

<玉すだれ歴8年の二つ目落語家、春風亭ぴっかり☆さんの話> 前座のころ、師匠の春風亭小朝から「男社会の落語界で女性の特徴を出せ、お客さまにも喜んでもらえる余芸がある」と勧められた。三味線や日本舞踊と並行して習っている。まだまだ基本の形しかできないが、少しの練習で例えば「魚」の形が覚えられるなど楽しい。

 海外や地方での独演会で玉すだれを披露すると、客席の雰囲気が柔らかくなり、噺(はなし)が伝わりやすくなる効果があると思う。最近は特にお客さまも玉すだれに興味を持つようになってきた。玉すだれが伝統芸能の活性化に一役買う役割を果たすとうれしいですね。

<南京玉すだれ> 竹をすだれ状に編み、自由に伸縮させたり、回転させたりできるようになっている。関東では33センチの竹を56本、関西では29センチを44本使うのが主流。「玉」には小さくてかわいいとの意味があり、一般のすだれより小さいことから玉すだれとなった。

 史料は乏しいが、江戸時代に旅の放浪芸人が物売りの客寄せの際、大道芸として披露し「唐人阿蘭陀南京無双玉簾(とうじんおらんだなんきんむそうたますだれ)」と口上を述べたことを起源とする説もある。鎖国の時代、オランダや南京といった地名を織り交ぜて、希少な舶来品のような名称にしたとされる。

 日本南京玉すだれ協会は富山県平村(たいらむら)(現南砺(なんと)市)の白山宮(はくさんぐう)を発祥の地と認定。五箇山(ごかやま)地方に伝わる民謡「こきりこ節」の演奏で使われる「ささら」という編竹(あみだけ)がルーツという。

 

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