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【放送芸能】

映画「武曲」−MUKOKU− まなざし真剣勝負

 鎌倉を舞台に、卓越した剣の腕を持つ現代の“侍”たちのぶつかり合いを活写した映画「武曲 MUKOKU」(熊切和嘉監督)が3日公開される。芥川賞作家・藤沢周の小説を原作にしたヒューマンドラマ。主演の綾野剛(35)は、徹底したトレーニングで肉体をアスリート並みに鍛え上げ、変幻自在の役者ぶりを発揮する。作品を通して感じたこととは−。 (鈴木学)

 「台本には最低限のせりふと状況だけで、現場に委ねてくれる脚本家の愛情と同時に、行間が広く大変さも感じました。演じた研吾に対してまず思ったことは、かわいそうな人。そんなこと初めてでしたね」。綾野はしみじみと振り返る。

 研吾(綾野)は、厳しい父(小林薫)の指導を受け剣士として一目置かれる存在になる。しかし、荒(すさ)んだ生活を送るようになった父とぶつかり、木刀を父の頭に振り下ろしてからは、自らも酒に溺れて退廃した生活に落ちる。僧の光邑(みつむら)(柄本明)は、彼を立ち直らせようと高校生の融(とおる)(村上虹郎)を遣わす。融は本人も気付かぬ剣の才能の持ち主だった。台風の日、研吾と融はついに剣を交える。

 「進む道を見失っていたとき、自分を求めてきてくれたのが融だった。決闘は研吾にとって剣を通した会話。楽しくてしょうがなく、真っすぐなまなざしを向けられて自分を取り戻していくんです。救いがないと思っていた研吾でも生きている限り、希望はあるんだと改めて思いました」

 一方、研吾の狂気の剣を目の当たりにして、融はかつて経験した生死の間にいる境地をもう一度味わいたいと、防具なしの勝負を挑んでいく。その姿を綾野は「現代的」と感じたという。

 ネット社会の現代は、目に見えない“敵”も多く、誰もがさまざまなプレッシャーの中で生きている。「そんな緊張感の中で圧倒的な力を目にした時、(常軌を逸して)はじけてしまう人間が出てきても不思議はないと思います」

 その融を演じた村上について「今後見られないかもしれないぐらいのみずみずしさが画面に出ている」と評し「ぜひ彼にも注目してください」と訴える。

 幅広い役をこなす綾野は「カメレオン俳優」「憑依(ひょうい)形」と形容される。本作でも、未経験の剣道の稽古と肉体トレーニングを同時に2カ月行い、体脂肪率7%の体をつくり、すご腕の剣士を形にしてみせた。「役の人間の生き方を必死になって見つけようとする姿が、幅広いという印象になっているのかもしれない。お褒めの言葉だと思っています」

 今後の仕事について聞くと「仕事は選ばれる側なので…」とした上で「こんな人をやらせたいと求め続けられるような、鮮度の高い食材でいたいと思っています」。真っすぐなまなざしでそう話した。

 

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