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【放送芸能】

静寂の語り50年 TOKYO FM「JET STREAM」

 遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休めるとき…。穏やかな語りと飛行機のジェット音で始まるエフエム東京(TOKYO FM)のラジオ番組「JET STREAM(ジェットストリーム)」(全国三十八局ネット、月−金曜深夜零時)が七月三日、放送開始から五十周年を迎える。FMを代表する番組であり続ける背景に、携わる人たちの美学がある。

 「きらめく星座の物語も聞こえてくる夜の静寂(しじま)のなんと饒舌(じょうぜつ)なことでしょうか」。弦楽器が奏でるテーマ曲「ミスター・ロンリー」にのせ、俳優大沢たかおさんが名文句を読む。

 番組はFM実用化試験局だった「FM東海」に、米国の番組を参考にした企画を日本航空が持ち込んで生まれた。一九六七年に放送を開始してエフエム東京に受け継がれ、九四年までナレーションの“機長”役を務めたのは、折り目正しい低音の声の城達也さんだ。その後を小野田英一さんが引き継ぎ、二〇〇〇年には“フライトアテンダント”として森田真奈美さんが就任。〇二年からは伊武雅刀さんが“三代目機長”を務めた。

 番組冒頭に読む放送原稿の名文を書いたのが、劇作家で放送作家の堀内茂男さん。〇九年からは堀内さんのただ一人の弟子という大滝裕史さんが引き継ぎ、時節に応じた海外の旅の話題や情報を毎日二本ずつ、原稿用紙二枚ぴったりに書き続ける。

 放送原稿は一から十まで説明せず四で止め、残りの六を聴く人に想像させるのがこつという。堀内さんから大滝さんが受け継ぐ教えは「品性を落とさない。危険な旅の話は書かない。政治の話はなるべく避ける」だ。

 大滝さんは「旅に行きたくなるように書いているつもり。ネットで見るのと違い、旅で恥をかいても生身の体験が人生を豊かにする」と力を込める。「旅へいざなう音楽番組」というコンセプトは変わらない。ただ外国に憧れた昔と違い、旅行が日常的になった近年は、番組のキーワードが人や場所との“出会い”に移ってきたという。

 約三十年間、番組に携わってきたエフエム東京の延江浩エグゼクティブプランナーは、番組の魅力は時間設定から生まれたという。「日付が変わる午前零時に番組が始まり、非日常の世界へ想像を羽ばたかせる。消えてなくなるはかない放送に大人と音楽の教養、ダンディズムを盛り込み、FM番組の定型になった」

 真夜中の夢の旅へ−。番組が目指すものを堀内さんはいたずらっぽく、こう語った。「聴きながら寝入ってしまう人は多いのでは。夢見心地でそのまま世界旅行の夢を見てくれたら、しめたものです」

◆独特の奥深さや重厚さがある 「現機長」大沢たかおさん

 二〇〇九年四月から「機長(パーソナリティー)」を務める大沢たかおさん(49)に聞いた。 (藤浪繁雄)

 −番組を担当してから九年目に入った。

 初めてのラジオの仕事がFM史上最高と言われ、独特の奥深さや重厚さがある番組。不安やプレッシャーは大きかった。城達也さんのダンディーな語りのイメージも大きかった。

 −マイクに向かう時の心構えに変化は?

 開始が深夜零時なので、眠りについてもらうことがテーマ。最初の三年ぐらいは試行錯誤だった。メトロノームを買ってきて、テンポを心臓の鼓動に合わせるなど、いろいろ試した。その加減は、なかなか分からないのですが。

 −番組で読む台本は詩のようでもあります。意識していることは?

 眠りにいざなうといっても、眠ってもらっても困るわけで(笑)。原稿に一分間で(難しい)固有名詞が三つも四つも出ると、分かりにくくなる。そんな時はテンポや間で工夫している。

 −時を経て番組にどんな変化を感じますか?

 五十年前、海外へ行くことは非日常だった。今は珍しくないし、インターネットで世界の情報はいくらでも入ってくる。番組も例えばハワイだったら、昔はワイキキビーチの情景などを語ればよかったのだろうが、今は流行しているブランチの店とか、具体的な旬の内容が多いですね。

 −「ラジオ離れ」と言われて久しいですが。

 僕自身、ラジオからふと流れてきたことが気になり、立ち止まって聴き入ってしまうことがある。情報過多の時代だが、音だけで感じることはすてきだし大切なことだと思う。決して終わらないメディアです。

 −スタジオを飛び出して開催される番組のコンサートも毎年盛況ですね。

 収録と違いミスすることはできません。毎回、暗中模索ですよ。

 −番組の今後は。

 城さんや伊武(雅刀)さんら、五十年間に関わってきた人たちを意識し、歴史と伝統を背負っていくことになる。個人的なことを言えば、俳優という仕事柄、同じ場所に通うことは少ないのですがこの八年余、ここ(TOKYO FM)に通っている。不思議な感じなんです。

◆きょう記念イベント 六本木・ミッドタウン

 放送開始五十周年を記念して、二日午前十一時から午後九時まで、東京・六本木の東京ミッドタウンで、イベント「JET STREAM LOUNGEラウンジ」が開催される。歴史を振り返るパネル展示のほか、午後一時からは公開生放送がある。大沢さん、三代目パーソナリティーの森田真奈美さんらが登場する。

 放送開始記念日の三日は午後十一時から約二時間の拡大版で放送。城達也さんの語りの音源などを紹介しながら半世紀を振り返る。この日のTOKYO FMは午前六時開始のワイド番組「中西哲夫のクロノス」から、午後五時の「Skyrocket Company」までの六番組で、五十周年を祝う企画を予定している。

 

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