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【放送芸能】

NHK「きょうの料理」60年 次代の変化 レシピに映し

 NHKの料理番組「きょうの料理」(Eテレ、月−木曜午後九時)が六十周年の節目を迎える。高度経済成長期の一九五七年十一月に始まり、現在まで、番組に登場した数多くのレシピは時代の変化を映し、日本の食卓を彩ってきた。飽食の時代を迎え、老いも若きもグルメブーム真っ盛りの今、国内最長寿の料理番組はどこへ向かうのか。 (砂上麻子)

 「タンタカ、タカタカ、タンタンタン〜♪」。包丁でまな板をたたく音をイメージして作曲家冨田勲さんが作ったオープニング曲は六十年間、変わらない。当初は十分間の放送だったが、少しずつ延びて現在は二十四分三十秒。収録は緊張感を保つため、今も放送と同じ長さで撮りきり、ほとんど編集を加えない。

 歴代の講師陣には料理研究家の土井勝さん、老舗懐石料理店「辻留」の辻嘉一さん、ホテルオークラ総料理長小野小吉さん、日本に四川料理を伝えた陳建民さんらそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 五七年十一月のメニューには「かきのカレーライス」や「ホワイトシチュー」といった洋食、「蝦仁豆腐(シャーレンドーフ)」「什景火鍋子(シチンフォーコーズ)」といった中華メニューが並ぶ。NHKの社内向け「番組制作ハンドブック」によると、番組には「婦人の生活から遊離しない」と同時に「半歩前に出る」ことが求められていた。高度経済成長を迎え、洋食など“半歩前”への憧れが反映された。

 一世帯平均人数が四人になった六五年一月には、それまで五人分だった材料も四人分に変更された。核家族化の進行で二〇〇九年からは二人分となった。

 一九七〇年代後半には「成人病」(生活習慣病)への関心が高まると、生活習慣病対策を意識した食事の企画が大ヒット。問い合わせの電話が鳴りやまず、番組テキストの売り上げも百万部に達した。

 その後、女性の社会進出が進み、共働き夫婦が増えるのに伴い、女性と料理の関係も変わってくる。そんな中、「時短料理」を提唱した料理研究家の小林カツ代さんの登場は大きな反響を呼んだ。七九年から番組を担当するフリーディレクター河村明子さん(69)は「手早くできて合理的な小林さんの料理はスタッフの間でも賛否両論でした」と振り返る。

 下ごしらえを省くなど、従来の作り方に一石を投じた小林さんの料理は、伝統に固執する人たちの反発を招く一方、働く女性たちからは「小林さんが『これでいいの』『こっちの方が楽』というのでほっとした」と多くの支持を集めた。

 バブル経済が崩壊すると、外食に代わり、スーパーやコンビニエンスストアの総菜を買って帰る「中食」が充実し、料理離れが指摘されるようになる。こうした中、番組はグッチ祐三さん(65)や平野レミさん(70)など、個性的なタレントを講師に起用し、料理の楽しさを伝えた。

 これまで紹介したレシピは約四万点。講師は千五百人を超える。生活史研究家の阿古真理さん(48)は「世の中の変化を素早くつかみ、番組に生かしてきた」と長寿の理由を分析する。

 今年四月からは、放送で紹介したレシピを一分間にまとめた動画を番組のホームページで紹介し、インターネットの無料通信アプリ「LINE」では余った材料を使って作る料理のレシピを配信している。

 番組の前シニアプロデューサー大野敏明さん(47)は「『自分で料理を作らなくてもいい時代』にどんどんなっているが、手作りの喜びとか魅力を伝える工夫をして、食卓を豊かにしてもらいたい」と話す。

◆「一汁一菜」お勧めします 講師の料理研究家・土井善晴さん

 一九八七年から「きょうの料理」の講師を務めている料理研究家の土井善晴さん(60)に料理や番組の魅力について聞いた。

 −「きょうの料理」の思い出は?

 父が土井勝ですから、子どものころからテレビに出ているのを見ていた。小学生になるころには大阪のスタジオによく連れて行ってもらい、片隅で収録風景を見ていた。それぞれの先生が真剣勝負で一生懸命教える姿が印象に残っていて、私は「きょうの料理」に育てられたと思っている。

 −料理をしない人が増えている。家庭料理の価値とは?

 家庭の主婦、特に女性は結婚したり子どもが生まれたりしたら、家の仕事をきちんとしたいと思っている。でもできないのが現実。その人たちに、どうやったらいいかという方法を教えたい。

 おいしいとは、牛肉の霜降りやマグロのトロだけでなく、普通においしいという食の真実を伝えることが家庭料理の価値につながると思う。味にばらつきがあるのが家庭料理。家庭ならではの優しい味が作れたらいい。料理に失敗はないんです。

 −最近、「一汁一菜」を提唱している。

 「一汁一菜」はご飯とみそ汁、漬物ですが、これなら男性でも五分で作れる。この中で栄養価がまかなえるし、食事を作って食べることが安心の土台になるし、自信につながるんです。

 

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