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【放送芸能】

VFXでリアルさ新境地 映画「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」

 一九六八年のヒット作を基に、新たな物語として再起動したシリーズ第三作「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」で、本物そっくりの猿のキャラクターをデジタル技術で再現させたVFX(視覚効果)の第一人者ダン・レモン氏(42)が来日し、本紙の取材に答えた。以前の作品では特殊メークで作った猿の顔も、VFXでよりリアルに。「観客がデジタルで作った場面と分からないレベルを目指している」。レモン氏ら技術者が切り開く映画の未来とは。 (浜口武司)

 猿の毛が一本一本、風になびき、怒りや悲しみのシーンで猿の顔がゆがむ。これらはすべて俳優の演技を撮影後にCG(コンピューターグラフィックス)や合成処理で実写映像を加工するVFXによるものだ。

 世界最高水準の映像スタジオ「WETAデジタル」(ニュージーランド)所属のレモン氏は話す。「この映画のすばらしいのは、主役が猿であるにもかかわらず、観客が共感できるところです」

 二〇一一年公開のシリーズ第一作「創世記」では、米国の製薬会社が開発した新薬で劇的な知的進化を遂げたチンパンジーの子シーザー(アンディ・サーキス)が、動物保護施設で虐待されている猿たちを率いて人類に反乱を起こす。第二作「新世紀」(一四年)では猿インフルエンザがまん延し、人類の文明は崩壊。シーザーは人間との共存を願いながらも、本格的な戦いに巻き込まれていく。

 レモン氏はシーザーというキャラクターを生き生きとさせたのは「アンディの演技とVFXの技術」と指摘。俳優の顔の表情や体の動きを細部までデジタルで記録する「パフォーマンスキャプチャー」という技術を使い、俳優の演技そのままに本物の猿が演技しているような映像に加工した。

 「あまりにリアルなので観客がVFXだと認識しないのが理想。まだ改善の余地はあるが、このシリーズの中でも技術は進歩しています」と明かす。

 コンピューターの進歩で俳優の仕事がいつの日か、デジタル技術に取って代わられる未来も想像されるが、レモン氏は現時点でそれを否定する。「俳優がいなければ、アニメーターが想像してゼロからキャラクターを作り上げるわけだが、その想像には限界がある。共演相手がいることで引き出される演技もある」と話し、VFXの技術者を「より良い作品づくりのお手伝い」と位置付ける。

 日本映画のデジタル技術は米ハリウッドと比べて、格段の差があると指摘される。「それは予算の違い。VFXを使うのが数ショットなら、それほどお金はかからないが、この映画のように千五百ショットがVFXなら非常に高額となり、クオリティー(質)が問われる。(日本が劣っているのではなく)すばらしい才能がある日本人がWETAにもいるということは言っておきたい」

<パフォーマンスキャプチャー> 人物や物体にマーカー(センサー)を装着しデジタルで記録する技術。体の動き(モーション)を記録する「モーションキャプチャー」に対し、2009年公開の「アバター」で顔の表情と体の動きの両方を同時に記録する手法が用いられた。顔の表情からエモーション(感情)もとらえる技術としてジェームズ・キャメロン監督が呼び始めたとされる。

 

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