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【放送芸能】

揺れる「密偵」 謎の本心 主演 ソン・ガンホ

 日本統治時代を舞台に独立運動組織と彼らを追う日本警察の攻防を描いたアクション映画「密偵」が十一日公開される。主演は大ヒット映画「JSA」などで知られる韓国人俳優ソン・ガンホ(50)。日本警察に所属する朝鮮人の警官役で日本語のせりふにも挑戦した。本心を隠した謎の多い役に「なかなか出会えないキャラクター」と手応えを語る。 (韓国・釜山で、砂上麻子)

 イ・ジョンチュル(ソン)は日本人の上司に、独立運動組織「義烈団」リーダーのキム・ウジン(コン・ユ)に近づき監視するよう命じられる。しかし、それは義烈団を率いるチョン・チェサン(イ・ビョンホン)がジョンチュルを団に引き込むための“餌”で、警察と義烈団の激しい情報戦に巻き込まれていく。

 日本と独立運動組織の間で揺れ動くジョンチュルについて「矛盾だらけの人間だったので出演を決めた」と語る。「韓国にとって痛みの多い時代に、ジョンチュルは生き残るためグレーな存在にならざるを得なかった。善と悪の二分法ではない生き方に興味をひかれた。本心がどこにあるか分からない役は役者として面白い」

 劇中では日本語のせりふが多い。「日本語が流ちょうな必要はなかったが、うまくないので恥ずかしい」と照れる。日本語のせりふは忘れたと言いながら「『どんな様子ですか』。最初のせりふだけは覚えている」と、おどけた。

 日本人の上司を鶴見辰吾(52)が演じる。「演技しながら学ぶ点が多かった。言葉は通じなかったが、演技を通して一つのチームになれた」と振り返った。「鶴見さんの出演部分がかなりカットされ、映画を見て、鶴見さんも戸惑ったのではないか」と思いやった。

 人間味あふれる演技で出演映画は必ずヒットし、韓国では今や「国民的俳優」とも呼ばれる。本人は「特別な目標はない。新しい作品や演技で観客を魅了できるよう自分自身を磨くことが俳優の基本だと思っている」と冷静。最近はドラマに出演する映画俳優が増えているが「断言はできないが、私は可能性は低い」と映画にこだわる。

 昨年、朴槿恵政権が政府に批判的な文化人をまとめた「ブラックリスト」の中にソンの名前もあった。盧武鉉元大統領をモデルにした映画「弁護人」主演が一因ともいわれ、あらためてその存在感が注目された。

 今年一月、韓国の「今年の映画賞」では「密偵」で主演男優賞を受賞。その際「『映画一本でどうやって世の中を変えられるのか』と言われるが、私は一本の映画で世の中を変えられると思う」とコメントした。「ここ数年、私の出演作が韓国で大きな話題になったので自分の考えを話さないといけないと思った。すぐに変わるわけではないが、映画を見た後でイメージが頭の中に残り、変化が始まる。見たものを記憶した瞬間、一歩を踏み出すのだと思う」と力強く語った。

 

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