東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【放送芸能】

ジャズレコード100年 Xマスイブに甘い調べを

ジャズ喫茶「メグ」でギターを演奏する皆川太一さん(中央左)。中央はボーカルの武田愛さん、ベースは田中洋平さん=東京都武蔵野市で

写真

 今年はジャズレコードが米国で初めて発売されてから百年。国内外でさまざまな記念イベントが開催されたが、レコードやCDの売り上げは減り続け、今や、いろんな場所で耳にするジャズもコアなファンに支えられているのが実情だ。日本では「マイナーレーベル」と呼ばれる中小・零細業者によるレコードブランドがジャズ文化の灯を守り続ける。クリスマスイブの今夜、甘いジャズの調べに耳を傾けては? (池田知之)

 東京・吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」。ほの暗い照明の下、ギタリスト皆川太一さん(35)が端正な音色でスタンダード曲を披露した。ジャズレーベル「寺島レコード」のプロデューサーで店主の寺島靖国さん(79)は「オーソドックスな演奏が曲の良さを最大限に表現している」と評価する。

 皆川さんは二〇〇七年にプロデビュー。確かな才能を認めた寺島さんは昨年、皆川さんの初めてのCDを発表した。皆川さんは「CDとして残るのは励みになる」と喜ぶ。

 ジャズ評論家の岡崎正通さん(71)は「ジャズの歴史はマイナーレーベルの歴史」と指摘する。

 一九一七年に発売された世界初のジャズレコードは五人組のオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドの二曲を収録。当時、米国の音楽市場を独占していた二強のうちビクターが手がけた。翌一八年に最初のマイナーレーベルが設立されると、その後、続々と新レーベルが誕生。ジャズ黄金期とされる五〇〜六〇年代には、CBSやビクター、デッカといった大手のほか、「モダンジャズ三大レーベル」と呼ばれたブルーノートやリバーサイド、プレスティッジが人気となった。

 一方、日本では二八年にジャズレコードが大ヒットし、一般に認知される。五三年にはオスカー・ピーターソンさんやエラ・フィッツジェラルドさんといった人気ミュージシャンが来日し、本格的なブームとなった。その後、秋吉敏子さんや渡辺貞夫さん、日野皓正さんら世界に誇る音楽家が登場し、日本のジャズを引っ張ってきた。

 ただ近年の音楽ソフト市場は生活の変化や娯楽の多様化で縮小が続く。日本レコード協会によると、二〇一六年の国内CD生産枚数は一億五千九百万枚と、ピーク時(一九九八年)の三分の一に。AKB48などJポップで百万枚を超える作品があるものの「ジャズは五千枚売れれば大ヒット」と言われるほどだ。大手レーベル関係者は「優秀な人を探しているが、確実に売れる保証がないと制作しにくい」と明かす。

 こうした中、マイナーレーベルの奮闘が続く。東京・神田駿河台の大型販売店「ディスクユニオン ジャズトウキョウ」の生島昇店長(53)は、数多くあるマイナーレーベルのうち人気ベスト3に「寺島レコード」と「ヴィーナスレコード」(東京)、「澤野工房」(大阪)を挙げる。「新譜の売り上げはほぼ毎回、上位に入る。個性的なのが支持されている」

 ヴィーナスのプロデューサーで社長の原哲夫さん(71)は自ら欧米に赴き、才能ある奏者を発掘。「生演奏をステージのかぶりつきで聴いているかのような音を目指している」とこだわる。澤野工房は欧州の奏者を中心に洗練された作品を発表。大阪・新世界にある老舗履物店の店主で、社長を務める澤野由明さん(67)がパリ在住の弟と連携してアルバムを作っている。「ジャズの魅力を知らない人に伝えたい思いがある」との使命感に燃える。

 ジャズ評論家でもある寺島レコードの寺島さんは「CDを作品として残すことでジャズの世界に貢献したいという自負心がある。たくさん売れなくとも良い作品なら残したい。それがマイナーレーベルの役割だ」と話す。

◆正蔵、JAZZを語る

 かつてジャズ専門誌に評論のコーナーを持ち、ジャズ入門書の著書もある落語家の林家正蔵さん(55)に日本のジャズの魅力を聞いた。

 −以前、ラジオ番組でジャズのレコードやCDを四万枚ほど持っていると話していたが。

 最近は数えるのが面倒になって、何枚あるのかは分からないですが、最近、買うのはほとんどCDです。新宿や御茶ノ水、吉祥寺、下北沢の中古店にも行って売り場の棚をあさっています。ジャズは新幹線で移動する時や部屋で好きなミステリーを読む時、寝る前などに聴いています。ヴィーナスや澤野、寺島のCDも持っていますが、どのレーベルも魅力的です。

 −こうした小さなレーベルの良さは。

 プロデューサーの趣味の良さを感じます。落語に例えるなら、誰もが知っている「寿限無」ではなく、通好みの「夢の酒」や「星野屋」など。「ああ、さらっとしていいねえ」とうならせるような。ヴィーナスは有名どころのミュージシャンの「この人のこの演奏を聴いてほしい」というプロデューサーの思いを感じます。澤野と寺島は「この人、知ってます?」とポケットの中からこっそりと出してくれるような驚きがたまらない。「ジャズ界は広いな」と勉強になります。

 −ジャズの魅力とは。

 自分を「独りぼっち」にさせてくれることかな。悩んでいることや楽しかったこと、昔の思い出にふけってざんげしたり…。何も考えないこともあるけれど。お酒を飲みながらBGMで聴いていると、スーッと音が消えていく瞬間があって、それもいい。相棒みたいなものでもありますね。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報