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【放送芸能】

歌姫に託し「戦争」次世代へ 「ミュージカル李香蘭」来月上演

演出・浅利慶太

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 戦中から戦後にかけて、日本と中国の間で翻弄(ほんろう)された実在の歌姫をモチーフにした「ミュージカル李香蘭(りこうらん)」が四月十〜二十二日、自由劇場(東京・浜松町)で上演される。演出の浅利慶太(85)は自らの戦争体験を元に、戦争を知らない世代へあの時代を伝えることの大切さを説く。「自分の生きた時代を残さなければならない。『李香蘭』には僕が一番言いたかったことが詰まっている」と語る。(猪飼なつみ)

 「これまで何度も上演しているけれど、李香蘭(日本名・山口淑子(よしこ))さんの人生を描くことで日本の歴史、未来のあり方を訴えられる」。小学三年生のときに太平洋戦争が始まり、空襲の恐怖も経験した。「今でも何があったかよく覚えています」

 役者は戦争を知らない世代。台本を読ませる稽古のほか、自身の体験や兵役に取られた少し上の世代の話も教える。「ただ観念的に戦争がいけないということではなく、何があったかを役者も知らなければならないと思うから」

 本作の終盤で、中国で裁判にかけられた李香蘭に対し、裁判長が「憎しみを捨てて考えよう」「徳を以(もっ)て怨(うら)みに報いよう」と呼び掛け、無罪となる。「『以徳報怨(いとくほうえん)』はすばらしい思想ですよね。そして『李香蘭』のテーマです」。この思想のおかげで李香蘭が許されたように、戦後日本があると考える。

 しかし、今の日本には「平和で良い国だけれど、逆に危機意識がなさ過ぎる。個人個人が国や平和を大切にするとはどういうことなのか、考える必要がある」と感じている。

 二〇一四年に自らが立ち上げた劇団四季を離れ、その後は「浅利演出事務所」を拠点にプロデュース活動を続ける。自らの生き方を「芝居に捕まった人生」と評す。「四季で経営も演出もずっとやってきたけど、みんなよく育ってくれた。ときどき見に行って、駄目出ししていますけどね」と笑う。

 こだわりも変わらない。「戯曲がすべてなんですよ。戯曲がすばらしければ感動的で、役者がきれいとか格好いいとかは二の次。だから一音も落とさずに伝えなければならない」。母音を大切にし「一音を落とす者は去れ」と教えてきた。「四季を辞めた人が今も舞台やテレビで活躍しているのは、この方法のおかげだよ」と笑顔を見せる。

 「李香蘭」の上演に向け「年は取ったけれど、演出だけは年を取らない。いつも通り、正確にやります。そうすれば作品の感動は伝わる」と意気込む。

 チケットの問い合わせはサンライズプロモーション東京=(電)0570・00・3337(午前10時〜午後6時)。

◆あらすじ

 日中戦争の最中、中国語が堪能だった日本人の少女山口淑子は、その美貌と歌唱力で注目を集め、中国で李香蘭として生きる。しかし、その人気を日本軍の宣伝に利用され、終戦後は中国で祖国反逆罪で死刑を求刑される。裁判で実は日本人だということが証明され、無罪を言い渡される。

 

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