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【放送芸能】

6館目の国立美術館 国立映画アーカイブがきょう誕生

国立映画アーカイブ本館(同館提供)

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 映画フィルムや写真、ポスターなど映画関連資料を収集・保存する「国立映画アーカイブ」(東京・京橋)が一日、誕生する。東京国立近代美術館の一部門であった「フィルムセンター」が独立し、全国六館目の国立美術館として映画文化の振興を図る。新館長に就任した岡島尚志さん(61)は「映画は芸術、文化、歴史の資料であり、日本映画は世界でも偉大でユニークと評価されている。可能な限り保護し、隠れた秀作に光を当てたい」と意気込む。 (猪飼なつみ)

 緑豊かな米軍キャンプの跡地に立つ「アーカイブ相模原分館」(相模原市)。低温・低湿に保たれた保存庫には国内外のフィルム約八万本が保管されている。主任研究員の大傍(だいぼう)正規さん(41)は「この世に一本しかない原版など、貴重なフィルムを発掘して、傷まないように保存しています」と説明する。

 フィルムの収集・保存は一九八六年に前身のフィルムセンター相模原分館ができてから本格化。最近では年間約三千本のフィルムが集まってくる。

 九割は中小の映画会社や製作者、個人コレクターからの寄贈で、残りは大手映画会社からの購入。六人の検査員がフィルムの内容や長さ、保存状態を調べ、補正できるところは直して、さらに修復の必要があれば、専門業者に依頼する。

収蔵作品には、現存する最古の日本映画「紅葉狩(もみじがり)」(一八九九年)のネガフィルムなど国の重要文化財四件も含まれる。三月までフィルムセンター主幹を務めた映画研究家とちぎあきらさん(60)は「ようやく文化として映画の重要性が認められてきた」と語る。

 ほかにも希少コレクションは多い。日本映画の傑作とされる「忠次旅日記」(一九二七年)はフィルムが失われていたが、広島県で見つかり、同センターが復元。溝口健二監督の最高傑作といわれる「瀧(たき)の白糸」(三三年)はフィルムが分散された状態で見つかり、それらをつなぎ合わせて修復された。

 しかし、課題もある。同館の職員は非常勤も含めて約六十人。作業量の割に人手が足りず、相模原分館には検査待ちのフィルムが山積みになっており「検査に入るのに一〜二年待ちの状態」(大傍さん)という。

 検査員の高齢化も進む。検査員の多くは民間の現像所のOBで、デジタルで映画が撮られるようになった今、フィルムの保存・修復の技術継承も課題となる。

 一方、デジタル映像の長期保存技術はまだ確立されていない。とちぎさんは「データを保存する媒体や再生機器の寿命があるので、フィルムよりコストが約十倍かかるともいわれている」と明かす。

 今後はアーカイブ本館の来場者をいかに増やすかも問われる。とちぎさんは「館内でのイベントなども工夫しつつ、映画館や街中でのイベントとも連携して館外でどう収蔵品を活用するかも必要」と指摘する。

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◆10日から開館記念上映

 開館記念として10〜22日、特集上映「映画を残す、映画を活かす。」が開催される。黒澤明監督の映画「生きものの記録」、国立映画アーカイブ提供=をはじめ、日本を代表する監督の作品や撮影風景の映像も見られる。料金は一般520円。展示室では17日から企画展「没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」を開催。約30カ国で黒澤監督の作品を紹介した映画ポスターを展示する。料金は一般250円。

◆アドバイザーに就任 奥田瑛二さんに聞く 若い才能を認める仕組みを

 国立映画アーカイブを運営面でサポートするアドバイザーには、日本を代表する映画監督や俳優ら八人が就任した。その一人で俳優、映画監督の奥田瑛二さん(68)は「日本映画の未来のためにアーカイブは大きな役目を担っている。僕もお飾りではなく、積極的に参加していきたい」と語る。

 −国立映画アーカイブの誕生について。

 六つ目の国立美術館になって、映画人にとってはモチベーションが変わる。アメリカは別だけど、やっとヨーロッパの映画先進国と並んだんじゃないかな。

 −フィルムセンターを利用したことは?

 映画「千利休・本覚坊遺文」(一九八九年)で、本覚坊役を演じるにあたって小津安二郎監督の映画を何本か見せてもらいました。笠智衆(りゅうちしゅう)さんの演技を勉強したくて。その後、監督になり、保存してもらえるような作品を撮りたいと思ってきました。熊井啓監督が「海と毒薬」のネガを寄贈したと言っていたから。

 −アドバイザーを引き受けた理由は?

 俳優、監督として日本映画のことをずっと考えてきた。映画のために国の機関の中で貢献できるのはチャンスですし、意義があると思いました。

 −これからどんな協力を?

 例えば若い監督の良質な作品でも、興行的な事情で劇場公開が難しいものはたくさんある。アーカイブを通じて、ちゃんと才能を認めてあげられるシステムがあればと思う。それから、施設が一般の人にまだまだ浸透していない。どんどん利用してほしいですね。

 

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