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【放送芸能】

作家40周年 今野敏 14社若手編集者 合同イベント

作家デビュー40周年を迎え、若手編集者らとポーズをとる今野敏さん=東京都中央区で

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 警察小説の旗手として多数のヒット作を執筆してきた今野敏(こんのびん)さん(62)が、今年五月でデビュー四十周年を迎える。「日本一締め切りが多い」ともいわれる人気作家。本来はライバルである十四の出版社が共同でキャンペーンを行うという、出版業界では異例の企画も進む。読者や編集者をひきつけてやまない今野さんの魅力に迫る。 (樋口薫)

 今野さんの小説を読んだことがないという人も「隠蔽(いんぺい)捜査」「ハンチョウ」「ST」といった刑事ドラマの人気シリーズは知っているのではないか。いずれも今野さんの小説が原作だ。

 一九七八年のデビュー以来、四十年間に百九十六作の単行本を刊行。新聞や雑誌に常に連載を抱え、締め切りの数は毎月十本を超える。一方で、大学時代から空手を続け、東京・中目黒に「空手道今野塾」を開設。ほかにも音楽レーベルを主宰し、模型作りや射撃など、多趣味としても知られる。さらに日本推理作家協会の代表理事を務め、後進の育成にも当たるなど、同業者や編集者からの信頼はあつい。

 四十周年に当たり、出版各社の若手編集者で結成された「若手会」のメンバーが、各種イベントを企画した。会は一昨年、今野さんの呼び掛けで発足し、ライバル社の編集者らが参加、親睦を深めてきた。今野さんは「最近の編集者はお行儀はいいけど元気がない。中にいる人間が楽しんでこそ、面白いものが生まれる」と意図を語る。

 企画第一弾として、今野さんは三月、八重洲ブックセンター本店(東京都中央区)で一日店長を務めた。エプロン姿で登場し、北杜夫さんや村上春樹さんら、愛好する作家のお薦め本を並べた売り場を設営。レジに立ってサインに応じるなど、ファンと交流した。

 第二弾は「小説誌ジャック」と銘打ち、十四社が発行する小説誌の四〜五月発売号で同時に特集を組む。ここまで大掛かりな横断企画は業界初といい、今野さんの空手塾に後輩作家が一日入門した体験記や、警察大学校で幹部候補生らに行った講演を収録するなど、各誌が工夫を凝らしている。また六月末までは、読者の好きな今野作品をツイッターで投票してもらう「今野敏大賞」も開催中だ。

 一連の企画について、今野さんは「今後の出版界を担っていく若手編集者が、私をダシに何かをやることで成長につながれば」と期待を込める。四十年の作家生活を振り返り「著作が百冊を超えたころから、急に執筆が楽になった。今より来年、来年より再来年の方が小説がうまくなると思って、コツコツと書いていきたい」と前を見据えた。

◇第2弾 小説誌ジャック

◆参加した雑誌等

「一冊の本」5月号(朝日新聞出版)

「オール読物」5月号(文芸春秋)

「サンデー毎日」5月下旬発売号(毎日新聞出版)

「小説現代」5月号(講談社)

「小説幻冬」5月号(幻冬舎)

「小説新潮」6月号(新潮社)

「小説推理」7月号(双葉社)

「小説すばる」5月号(集英社)

「小説宝石」5月号(光文社)

「小説 野生時代」6月号(KADOKAWA)

「小説BOC9」(中央公論新社)

「読楽」5月号(徳間書店)

「ランティエ」5月号(角川春樹事務所)

「Webジェイ・ノベル」5月更新(実業之日本社)

◇40年で培ったリアリティー

 武道や伝奇など多彩な作風の今野さんだが、代名詞の警察小説シリーズを、作家本人は「お侍さんを書いている感覚。たたずまいが好き」と語る。リアルな描写が人気の秘密だが、意外なことに現職警察官などを取材することはほとんどないという。「自分のサラリーマン経験からの類推です。本当のことだけ書いても、リアリティーは得られない。40年で培った技術で『本当らしいこと』を書いています」と明かす。代表的な3シリーズの担当編集者に魅力を聞いた。

◆「隠蔽(いんぺい)捜査」

 堅物の警察庁キャリア官僚、竜崎の活躍を描く。2014年のTBSによるドラマ化では、杉本哲太さんが竜崎を演じた。

 担当の新潮社・西山奈々子さん(30)の話「一見、面白みのないまじめ一徹の官僚を主人公に据え、警察小説の歴史を変えたといわれるシリーズです。何事にも筋を通し、ぶれない竜崎の姿は今野さんと重なります」

◆「警視庁強行犯係・樋口顕(あきら)」

 組織と家庭の間で揺れ動く樋口刑事の姿をリアルに描く。15年のテレビ東京によるドラマ化では、内藤剛志さんが樋口を演じた。

 担当の幻冬舎・鳥原龍平さん(32)の話「樋口は、こういう上司が実際にいたらと思う理想の主人公です。われわれ若手にも分け隔てなく接してくれる今野さんはまさしく樋口そのものです」

◆「安積班(あづみはん)」

 強行事件の捜査に当たる安積刑事らチームの奮闘を描く。09年以降、TBSがドラマ「ハンチョウ」としてシリーズ化、佐々木蔵之介さんが安積を演じた。

 担当の角川春樹事務所・運天(うんてん)那美さん(40)の話「個々のキャラが立っているのが魅力。実は私、編集者をやる前から今野さんに空手を教わっているのですが、安積のように周囲を引っ張ってくれる父親のような存在です」

      ◇

<今野敏(こんの・びん)> 1955年、北海道生まれ。上智大在学中の78年に「怪物が街にやってくる」でデビュー。レコード会社勤務を経て執筆に専念。2008年、「果断 隠蔽捜査2」で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。

 

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