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【放送芸能】

山崎努、超俗の画家 熊谷守一になる 映画「モリのいる場所」

 世間から隔絶した晩年を送り「超俗の人」と呼ばれた画家熊谷守一(くまがいもりかず)(一八八〇〜一九七七年)の一日を描いた映画「モリのいる場所」が十九日、公開される。演じるのは以前から熊谷を敬愛し「モリカズさん」と呼ぶ山崎努(81)。好きなあまり、役作りに苦労したという山崎。「風景の中にモリカズさんが溶け込み、一体化している感じがとてもよく出ている」と出来栄えに自信を見せる。 (深井道雄)

 「十数年前だったか、ふらりと立ち寄った書店でモリカズさんの画文集を手にし『宵月』という作品を見て、背景の夜の色に猛烈に引かれました」。以来、熊谷の作品を鑑賞し、生い立ちを調べ、人となりを想像してきた。「モリカズさんは個性が強すぎて、世間と折り合いをつけるのがうまくできなかった。そのため自分と世間との間に壁を作り、自分の世界を大事にしたのではないか」と話す。

 普段、役作りに当たってその人物のゆがみを見つけることから始めるという山崎。ところが「長年のあこがれ」という熊谷がまぶしすぎて、山崎にはその人物像が最初は見えなかったという。「一般の印象では『仙人』とか『聖人』とか穏やかですが、実際はものすごく激しいものがあって、それを出さなかったんだと思う。だから僕はモリカズさん(の本心)に仮面をかぶせちゃおうと思った」

 山崎の紹介で、熊谷を知った沖田修一監督は山崎を念頭に脚本を書いた。本作では、七十六歳のとき脳卒中に倒れ、その後は東京都豊島区の自宅の敷地から外に出ることがなかったという熊谷の九十四歳の一日を描く。「モリカズさんは一日中、庭のアリや石ころを観察して飽きない人でした。アリは左の二本目の足から歩き始めるという言葉も残っているようですが、これは絵を描くために見ているのではなく、ただ面白い、不思議だから見ている。普通のものつくりの人とはちょっと違う」

 熊谷を支え、世間とのパイプ役を務めた妻秀子を樹木希林(75)が演じた。「彼女とは初共演でした。すれ違いでしたが、最初に入った劇団が一緒で、何を考えているか、空気感で分かり合えた。変人と妻の独特な姿がよく出ていると思う」。アドリブも多かったというやりとりは笑いを誘う。

 主な舞台は、手入れのされていない庭。「行ってくるよと妻に声をかけ、つえをついて庭を散歩する。気に入った切り株に腰掛け一服。モリカズさんのキャラクターが突出することなく、景色の一部になっている。温かさのある仕上がりになった」と胸を張る。

 

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