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【放送芸能】

逆風下 民謡の明日は… 魂伝えたい 頑張る人々

 日本各地の風習や暮らしに根付く民謡に厳しい逆風が吹いている。40年前のブームもすっかり冷め、愛好者は高齢化。若返りもないまま、担い手は減少し、民謡の未来に暗雲が立ち込める。かつては町おこしに一役買って「地域の財産」とも呼ばれた民謡。日本の「ソウルミュージック」ともいえる民謡に明日はあるのか!? (藤浪繁雄)

◆歌い続ける

 「百まで歌いたいね〜」。東京・南大塚ホールで先月下旬に開かれた月例コンサート「民謡定席」。芸歴約六十年の大ベテラン小沢千月(ちげつ)さん(82)がそうあいさつして「笠間石切唄(かさまいしきりうた)」(茨城)を熱唱すると、高齢者が目立つ約二百五十人の観客は楽しそうに手拍子を送った。東京都江東区の兎沢(とざわ)正史さん(71)は「民謡を聴くと元気が出る。この『定席』は毎回ほぼ来ている」と笑顔を見せる。

 民謡は地域ごとに歌詞や節が変化し、全国に数万曲あるとされる。大正期には「江差追分(えさしおいわけ)」(北海道)や「安来節(やすぎぶし)」(島根)の大会が東京で開かれ、流行歌のように全国に広まった。戦後は集団就職で上京した人たちが集う「民謡酒場」が流行。一九七八年にはNHK番組「民謡をあなたに」が始まり、ジーパン姿で歌う金沢明子さん(63)が人気となった。ご当地民謡ののど自慢コンクールも各地で開催された。

 「民謡定席」を主催する日本民謡プロ協会で幹事も務める小沢さんは「昔からのファンが高齢化するばかりで補充がない」と危機感を募らす。協会所属の歌手たちにも「この状況を自分たちでどうにかしようという意識が足りない」と嘆く。ただ一方で「『石切唄』を歌うと石切って何?と言われる時代。難しい」と、悩みは尽きない。

 民謡界の最大組織、日本民謡協会の会員数は約一万六千人。平均年齢は七十歳を超え、ピーク時(九三年)の約四万九千人の三割強まで減った。菊地淡茂(たんしげ)組織部長(66)は「コンクールもどんどん減っている。かつては千件超あったが、今は五百件くらい」と話す。

◆大会を創設

 そんな逆風の中、埼玉県飯能市で今年三月、地元に伝わる「吾野(あがの)はた織唄(おりうた)」の第一回コンクールが開かれた。県内外から約百三十人が出場し、会場は満員の約千二百人でにぎわった。

 今どき珍しい「第一回大会」を開いたのは、市内で自動車整備業の傍ら、津軽三味線の指導者として民謡に携わる小山貢皓(おやまみつひろ)さん(77)。「飯能で機織(はたお)りが盛んだった時代の名残を感じさせる曲を伝えたいと手弁当で開いた」。盛況ぶりに「ぜひ二回目も」と期待の声も寄せられるが「収支は赤字。市の支援も期待できないし、軍資金はもうないよ」と明かす。

◆発掘にも力

 コンクールには同市出身で、一九六〇年代にこの曲をよみがえらせた小沢さんもゲスト出演した。「埋もれている民謡を残す努力をしていかないと途絶えてしまう」と懸念する。

 NHKは二〇一三年五月から月一回ほどのペースで民謡番組「民謡魂 ふるさとの唄」を放送する。司会には、人気グループTOKIOのリーダー城島茂さん(47)を起用。NHK「のど自慢」のように各地を回る公開放送だ。田平憲(ただし)チーフプロデューサー(44)は「(事前取材で)音源もないような曲を探り、それを地元の高齢者に歌ってもらい、本番で再現することもある」と発掘にも力を注ぐ。課題は視聴者層の若返り。「城島さんの力も借り、四十代、五十代を取り込み、その世代に民謡を伝えてもらいたい」と期待する。

◆民謡「応援団長」 TOKIO・城島茂さんに聞く

 「民謡魂」の司会を5年間も務める城島茂さんは、今や民謡の「応援団長」を自任する。4月8日に番組収録のあった埼玉県草加市で話を聞いた。

−民謡の魅力とは?

 訪ねた土地の民謡を聴くと、そこの風景や住民の暮らし、歴史を感じる。独特の薫りに思わず耳を傾けてしまいます。

−番組に携わるまで、民謡にはどんな印象を?

 近くて遠い世界、世代が違うかなと。でも思えば、盆踊りでは民謡が流れていたし、ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」(TBS)のテーマ曲も民謡「北海盆唄」を基にしていた。生活の中にしっかりあるんだなあと実感しています。

−TOKIOではギターを担当。ロックとの違いは?

 ロックやポップスは、リズムやテンポが分かるが、民謡ではそれが分からないことがある。(歌手や奏者は)どこで息を合わせているのか、それでも音楽としてちゃんと成り立っているのが不思議で、これが「あうんの呼吸か」と感じた。

−一年前から三味線を習い始め、四月放送の番組で初披露しました。

 ギターとの共通点も多いだろうと始めたが、弾き方やフォームが全然違う。手首を折れそうな角度まで曲げて固定して弾く。稽古初日に「失敗した」と思った。でも、三味線の稽古をするうちに日本音楽特有の間の取り方が分かってきた。

−応援団長として、民謡とどう向き合う?

 番組ではこのところ若手歌手の出演がとても増えているし、若い世代に興味を持ってもらえるようにしたい。「リーダーが出ている番組」と思ってもらえたらうれしい。TOKIOの活動とは違う世界観を大切にしていきたいですね。

 

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