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【放送芸能】

ドラマ「おっさんずラブ」 放送終了後半年…ファンの心、今なお熱く

 テレビ朝日系で4月期に放送された連続ドラマ「おっさんずラブ」が放送終了後半年近く経た今なお、ファンの心を熱く燃やしている。同じ職場の男性同士のピュアな恋愛感情を描いた異色作で視聴率こそ低かったが、SNSからじわじわ広がり、展示会やコミック化、海外展開…と勢いは止まらない。社会現象化したドラマは、何がファンのハートをつかんだのか−。 (竹島勇)

人気を集めている10月5日発売のDVD、ブルーレイ。価格はブルーレイ2万3328円(税込み、5枚組み)、DVD1万8468円(同)。発売元・テレビ朝日、販売元・TCエンタテインメント

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 東京・タワーレコード渋谷店で十二月十六日まで開催中の「おっさんずラブ展〜君に会えてよかった。〜」。登場人物の勤務先の日報などの小道具や名シーンの写真が展示されているほか、会場限定品を含む番組グッズなどが購入でき、連日三十〜四十代の女性を中心ににぎわっている。埼玉県秩父市の女性カメラマン(31)は「恋の行方を毎週はらはらしながら見ていた。自分がDVDを買ったり、展示に足を運んだりするとは思わなかった。最終回の前はSNSでファン同士が思いを共有した」と熱く語る。

◆番組展、各地で大入り

 番組展は「東京凱旋(がいせん)」と銘打たれている。九月に渋谷の別会場で開かれ、十、十一月にかけ大阪と名古屋でも開催。いずれも大入りが続き今回、満を持しての「凱旋」となった。テレ朝の担当者は「放送が始まって反響が大きいので、展示会が決まった。制作現場に小道具を捨てないようお願いした」と明かす。

ドラマ「おっさんずラブ」の関連グッズが展示された会場=東京都渋谷区のタワーレコード渋谷店で

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 ドラマは深夜帯の放送だったこともあり、平均視聴率は4・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)にすぎなかった。なぜ、こんなにもファンの熱気がいつまでも続いているのか。

 テレビ事情に詳しいライターの桧山珠美さんは「笑えて泣ける構成が絶妙。展開が容易に読めなかったし、ハマった人は自分が魅力を発見した気になり、熱量のあるファンを生んだ。自由度が高い深夜で作りたい番組を実現できたのが成功の要因」と分析する。その上で、SNSから火が付き、放送終了後も関心が高まったことには「演出や小道具に気になる仕掛けがあり、気づいたファンはそれをSNSで発信し、DVDやネット配信などで繰り返し見た。熱心なアニメファンのようだった」と話す。

 広がりは展示会だけではない。番組は動画配信で視聴でき、最終回の無料見逃し配信は七日間で百二十万回以上の再生を記録、テレ朝の最高記録を更新。DVDとブルーレイの購入予約数も局の過去最高だった。講談社では女性向け漫画誌「BE・LOVE」で十一月一日発売号からコミックの連載を始めた。ドラマの徳尾浩司さんの脚本に準じた内容だ。

表彰式で笑顔を見せる田中圭さん(左)と吉田鋼太郎さん=東京都港区で

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◆低視聴率だったが…

 十月末の「東京ドラマアウォード2018」で、連続ドラマ部門のグランプリを獲得した。「視聴率は低かったけど、みんなでぶれずに楽しいと思える作品を作った」と喜びを語ったのは主演の田中圭さん。田中さんは主演男優賞、相手役の吉田鋼太郎さんも助演男優賞に輝いた。吉田さんは「今回はやったことのない“ヒロイン”。田中君をひたすら愛した」と会場の笑いを誘った。

 同賞は海外に展開できる可能性が高いテレビドラマを顕彰しようと二〇〇八年に始まった。「おっさんず−」も韓国や台湾、香港で字幕付きで放送とネット配信され、米国やタイにも売れたという。

 この現象を、法政大学社会学部メディア社会学科の藤田真文(まふみ)教授は「“笑い”が解放感をもたらしてくれ、しかもLGBTへの偏見があまり感じられない作品」と見る。その上で「宗教的な理由などで同性愛を罰する法律を持つ国もあり、LGBTの人たちは社会的偏見による生きづらさを抱えているが、笑いの力でポジティブに描かれることで各国の視聴者にも浸透していくだろう」と考える。

コミックにもなった「おっさんずラブ」 (C)山中梅鉢/講談社

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◆SNSで広がり想定外

 局には続編を熱望する声が相次ぎ、番組の貴島彩理(さり)プロデューサーは「こんなにも視聴者の皆さまからの愛を感じることができるというのは初めての体験で、視聴者やネットに支えられ、育てられた番組だという思い」と話す。

 想定外で規格外の広がりを見せた「おっさんずラブ」。テレビ評論家のこうたきてつやさんは「『傷だらけの天使』(日本テレビ系、一九七四〜七五年)は視聴率は高くなかったが、口コミで評判が広がり、伝説的ドラマとなった」と事例を踏まえつつ「今はSNSがファンの評価や愛情をあっという間に社会に広げる。時代を反映した良質なドラマは放送後に動画配信などで視聴者を増やし、浸透することを証明した。視聴率が古い尺度になったことを示したエポックとなる作品」と語る。

 桧山さんは言う。「『人を好きになること』という普遍的なテーマを描いていた。だからボーイズラブ好きだけではないファンが付いた」。実は正統派のドラマだったのかもしれない。

<おっさんずラブ> 女性好きだがモテない33歳の会社員(田中圭)が、ピュアな心を隠し持つ上司(吉田鋼太郎)とイケメンの後輩社員(林遣都)との男性の三角関係になる物語。2016年に深夜の単発ドラマとして放送。連ドラ版は今年4月から土曜深夜に全7話を放送。SNSで「愛について考えさせられる」と話題になるなど、SNSがファンをつなぎ、拡大させた。貴島彩理プロデューサーは「仕事に生きるアラサーの男女は“自分にとって都合のいい相手”を求めがちだが、目の前に理想的で人としても尊敬できる“すてきな同性”が現れたら…。今どきの恋愛観を切り取ろうとした結果、たまたまおっさん同士の純愛ドラマになった」と説明する。

 

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