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【放送芸能】

<平成エンタメ潮流 新時代へ> (下)急成長 2.5次元ミュージカル

昨年12月、「テニスの王子様」の公開稽古で熱演する、主人公役の阿久津仁愛ら出演者たち=東京都新宿区の日本青年館ホールで(c)KT/S・N・STP(c)KT/S・TM

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 昨年暮れ、東京都内のホール。コミックの紙面からキャラクターが飛び出てきたように、男性俳優が華麗なフォームでテニスラケットを振る。ピンスポット照明と打球音が融合し、手に汗握るラリーとなった。超人的な技の応酬、個性的な登場人物たちの歌やダンスで魅了する2・5次元ミュージカル『テニスの王子様』シリーズ(通称テニミュ)だ。許斐剛(このみたけし)の人気漫画「テニスの王子様」を舞台化し、この十五年ほど多くの女性ファンの心を熱く燃やし続けている。

 平面上(=二次元)の漫画やアニメ、ゲームの世界を、生身の出演者がミュージカルなどの舞台(=三次元)で体現する。その中間という意味から「2・5次元」と呼ばれるようになった。先駆けのテニミュは二〇〇三年に初演。出演者が代替わりし、ストーリーも進みながら上演が続いている。人気俳優の城田優、斎藤工らもテニミュ出身だ。

 昨年大みそかの「NHK紅白歌合戦」には、人気ゲーム「刀剣乱舞」のキャラクターが“2・5次元化”した「刀剣男士」が登場。激しく戦うパフォーマンスを披露し、視聴者を驚かせた。

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 ぴあ総研によると、2・5次元舞台はこの十年ほど急速に上演作品数、観客動員数を増やした。一七年は百七十一作品、二千七百三十四回の公演があり、延べ二百二十三万人を動員。公演チケット販売額を推計した市場規模は前年比21・0%増の百五十六億円。観客は圧倒的に女性で、二十代から三十代が中心だ。

 一四年三月、舞台の制作会社や芸能プロダクション、出版社などが参加して一般社団法人「日本2・5次元ミュージカル協会」が設立された。音楽や歌を使わない舞台作品も含め、多くの2・5次元舞台を手掛けるネルケプランニングの松田誠会長が代表理事を務める。協会の広報担当の遠田(とおだ)尚美さんは「テニミュが続いたこともあり、漫画などのアニメ化や実写化という展開に加え、舞台化もビジネスになると考える原作者が増えた」と説明する。

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 演劇界に“革命”を巻き起こした2・5次元舞台。その成功の要因は何か。2・5次元ミュージカルについての論文がある共立女子大学の鈴木国男教授(演劇学)は「新たな客層の掘り起こし」と分析し「漫画やアニメ、ゲームのファンは、自分が見つけてきたものに自分の金と時間を使うことに慣れていて、自分の好む作品が2・5次元化されれば見に行く」と話す。

 演劇全般に精通しているフリーアナウンサーの中井美穂は「日本人は完成されていないものをめでる感覚がある。自分が見つけた才能が開花していくのを楽しむのは、宝塚歌劇や歌舞伎が良い例」と話し、若い男性たちがキャラクターを演じる2・5次元も同様。「キャラという着ぐるみをかぶった男の子を楽しむ。最初は幼かったり、歌に不安があったりした子が演技や歌に安定感が出る。ファンはそれを感じるために繰り返し劇場に足を運ぶ。アニメ化作品と2・5次元の舞台化はそこが決定的に違う」と強調する。

 一方で、ある演劇関係者のように「2・5次元の公演が増えるのは結構だが、一部の作品や出演者の質には首をかしげるものもある。人気の漫画やゲームを安易に原作にしてイケメンを出しているだけではジャンルとして確立しない」と指摘する向きもある。

 協会の松田代表理事は今後の展開について、国際化を見据え「二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開会式に貢献できれば」と夢を語る。 (竹島勇)

■2・5次元ミュージカル・ 舞台を巡る主な出来事

※平成初期 アニメを基にしたミュージカル上演相次ぐ

1991(平成3)年  「聖闘士星矢」

  93(平成5)年  「美少女戦士セーラームーン」など

  97(平成9)年  「サクラ大戦歌謡ショウ」

2003(平成15)年 『テニスの王子様』初演

  12(平成24)年 『弱虫ペダル』

  14(平成26)年 一般社団法人「日本2.5次元ミュージカル協会」設立

  15(平成27)年 『デスノート THE MUSICAL』韓国進出 ミュージカル『刀剣乱舞』

  18(平成30)年 刀剣乱舞のキャラクター「刀剣男士」が「NHK紅白歌合戦」出場

◆東京公演の予定

 ことし上半期までに東京公演が予定されている作品は「ミュージカル『刀剣乱舞』〜三百年(みほとせ)の子守唄」「舞台『機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)‐破壊による再生‐Re:Build』」、古舘春一のバレーボール漫画が原作のハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“東京の陣”などがある。

2・5次元の舞台の魅力は? 「若い子たちが全力でキャラとして舞台に立つ姿が楽しいところ」

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◆阿久津仁愛に聞く

 昨年末に東京、現在は大阪、そして二月に再び東京公演があるテニミュの「ミュージカル3rdシーズン 青学(せいがく)VS四天宝寺(してんほうじ)」。主人公の天才テニス少年、越前リョーマを演じている阿久津仁愛(あくつにちか)(18)に聞いた。

 −テニミュの魅力は。

 熱量。胸が熱くなる作品です。リョーマは無理して生意気しているキャラクターかな。キャラはお客さまが大切にしているので伝わるように心掛けています。

 −一六年の初舞台から演じて二年。

 衣装を着て、帽子をかぶるとパッとリョーマになりますね。体が勝手に動くようになりました。

 −美しく見せるために心掛けていることがあるとか。

 (リョーマは左利きなので)ラケットを持っていない右手が美しく見えるよう心掛けています。足のスタンスも気にして、リョーマの大きさを感じさせるようにしている。それは自分の工夫です。

 −ファンは熱い。

 お客さまの勢いにのまれそう。反応が良くて演じやすい。全員で踊る場面では『オレだけを見て』という思いです。

 −中国・上海でも公演した。

 日本と反応が全然違い驚いたが、楽しんでもらえたと感じたので新鮮でした。キャラとしてカッコよければ、魅力は自然と伝わる。

 

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