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【放送芸能】

アポロ11号着陸から50年 月がブームに? 相次ぎ題材の映画公開

 月を舞台にした映画が二本、相次いで公開される。人類初の月面着陸に成功した米国の宇宙船アポロ11号を描いたハリウッド映画と、ドラえもんとのび太が月面探検するアニメだ。月は地球に最も近い天体で、満ち欠けも見える身近な存在。遠い昔から、人々の想像力をかき立て、創作の素材となってきた。アポロ11号が月面着陸を果たしてから今年で五十年。「月ブーム」の到来か? (酒井健)

 月が登場する創作は、近代以前から“星の数”ほどある。SFに詳しい惑星科学が専門の会津大准教授、寺薗淳也(51)によると「月へ行く物語」が描かれた世界最古の創作は、日本の「竹取物語」という。かぐや姫が月へ帰っていく話だが、平安時代の貴族に既に「月に美を見いだし、憧れる心があったのだろう」と寺薗は想像する。

 一方、月に行く世界初の映画は一九〇二年のフランスの「月世界旅行」。十九世紀後半に書かれた小説が原作の十数分の無声映画で「最初のSF映画」と呼ばれる。大砲で打ち上げた宇宙船で研究者六人が月を訪れ、現地人と遭遇する。「当時は、月にも地球同様の世界があるという想像が、まだ成り立った時代」(寺薗)という。

 六八年のスタンリー・キューブリック監督の傑作「2001年宇宙の旅」では、月に人が住んでいるという設定。九五年の「アポロ13」は、トラブルで月面着陸に失敗し、事故死を目前とした宇宙飛行士が無事帰還するまでの人間ドラマを描いた。

 月は「隠し味」にもなる。六一年の名作「ティファニーで朝食を」では、直接の月の描写はないが、往年の名女優オードリー・ヘプバーンが名曲「ムーン・リバー」を歌うシーンが有名だ。八二年のスティーブン・スピルバーグ監督の「E.T.」では、少年が友だちの宇宙人と自転車で満月が浮かんだ夜空を走る。八三年、マイケル・ジャクソンの「スリラー」の音楽ビデオでは、満月の夜にマイケルがオオカミ男に変身する。

 「竹取物語」の日本でも、三日月マークの覆面の「月光仮面」が活躍する実写版のテレビ番組は五八年に始まり、その後、アニメにもなった。九二年に始まったアニメ「美少女戦士セーラームーン」の決めぜりふは「月に代わってお仕置きよ」。

 さて、今年の新作だ。映画「ファースト・マン」は、アポロ11号の船長として人類で初めて月に立ったニール・アームストロング船長の人間ドラマ。そしてアニメ「ドラえもん のび太の月面探査記」は、のび太たちと謎の転校生ルカとの友情を月を舞台に描く。

 「ファースト−」のデイミアン・チャゼル監督(34)は映像も人物像もリアリティーを追求。「自分も月に行ったような気持ちになってほしい」と話す。

 こだわったのは、アームストロングの月への思いだ。幼い娘をなくしたアームストロングは喪失感を抱き、それを乗り越えるために挑戦したのが、月着陸。地球に最も近い天体とはいえ、命がけの冒険だ。実際、米航空宇宙局(NASA)の訓練中に、何人もが亡くなった。月はアームストロングにはもちろん、人類にとって大いなる挑戦の対象だった。

 アームストロングの周辺にも取材したチャゼルは「大いなるリスクを取って月へ行った行為に神秘的な魅力を感じた。人類にとって月は『希望とロマンの場所』」と言う。

 ドラえもんたちが月を探検するアニメの脚本は、直木賞作家の辻村深月(みづき)(38)が手掛けた。月面探査機が月でとらえた白い影を「月のウサギだ」と言って笑われたのび太が、ドラえもんの道具で地球から見えない月の裏側にウサギ王国をつくる−というストーリーだ。

 くしくも中国の無人探査機が月の裏側に世界で初めて着陸したばかり。アニメならではのファンタジーの世界を通じて「『月の裏側に、自分と同じ思いを持つ誰かがいるかも』と想像してもらえたら」と、辻村は期待する。

 何かと話題になる月。寺薗准教授は「肉眼で模様が分かる月は他の星と違って、あれこれと想像をかき立てやすい存在。物語の創作には格好の素材だ」と言う。アポロの月面着陸から半世紀。月が舞台の創作は、まだ出てきそうだ。

月旅行について語る山崎直子=東京・内幸町で

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◆行けるのなら行ってみたい 宇宙飛行士の山崎直子

 宇宙飛行士の山崎直子(48)は、アポロ11号の月面着陸後に生まれた世代。映画「スター・ウォーズ」やアニメ「宇宙戦艦ヤマト」を見て、宇宙に憧れを持ったという。

 高度約四百キロの国際宇宙ステーション(ISS)から眺めた月は「見上げたり、横からだったり。大きさは地上で見るのとほぼ同じ。澄んだ白色に近かった」。

 その月が、人々から愛され、映画などの舞台として描かれることには共感できるという。「小学生の時に、天体望遠鏡で初めて見たのが月のクレーター。見慣れた一番近い天体で、手を伸ばせば届きそうだった。『もしかしたら行けるかも』といった想像力をかき立ててくれた」

 「もちろん、行けるのなら行ってみたい。写真や映像でしか見たことがないけど、満ち欠けする青い地球を月から見てみたい」と目を輝かせる。

 アームストロングをはじめとした「先人のおかげで、宇宙や月は身近になってきている」と感じる。ISSには既に民間人が滞在したことがある。月を周回するステーションを、二〇二〇年代後半に造る構想もある。

 「チケットを買って月旅行」というのは、まだ想像の世界。それでも「いずれは、子どもからお年寄りまで、宇宙に行ける時代が来るかもしれない。映像で見るだけでなく、実際に修学旅行などで、誰もが月を訪れるような時代になってほしい」と山崎は夢を膨らませた。

◆アームストロング船長の人生描く「ファースト・マン」

・1969年7月、アポロ11号の船長として人類で初めて月に降り立った、熱くそして冷静なアームストロング(ライアン・ゴズリング)の人間ドラマ。60年代の古めかしい機器を再現し、臨場感あふれる映像が魅力。デイミアン・チャゼル監督。2月8日公開。

「ファースト・マン」の一場面。アームストロング船長を演じるライアン・ゴズリング

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◆「ドラえもん のび太の月面探査記」

・月面探査機が月でとらえた白い影が大ニュースに。それを「月のウサギだ!」と信じるのび太は、ドラえもんのひみつ道具を使って月の裏側にウサギ王国をつくることに。そんな時、不思議な少年ルカがのび太の小学校に転校してくる。八鍬新之介監督。3月1日公開。

「ドラえもんのび太の月面探査記」の一場面。右はルカ

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