東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<歌舞伎>熱血79歳、息子のギターで1時間 坂東竹三郎が5役一人語り

 上方歌舞伎のベテラン女方、坂東竹三郎が来月九日午後六時半から、東京・浅草の木馬亭で「坂東竹三郎 語りの世界」と題して、一人語りで近松門左衛門作「おさん茂兵衛」の五役に挑む。来月は三日から国立大劇場で始まる歌舞伎公演にも出演し、「曽根崎心中」の平野屋久右衛門を勤める。その多忙な舞台を縫っての東京で初の自主公演。“熱い歌舞伎役者”の異名を持つ七十九歳の竹三郎に抱負を聞いた。 (神野栄子)

 「芝居が好き。芸一途(いちず)に生きてきましたから」。開口一番、熱い言葉がほとばしる。

 二〇〇六年五月、大阪・国立文楽劇場での竹三郎一門による自主公演「竹登(たけと)会」で、息子でギタリストの岡崎泰正の劇伴(伴奏)で初めて「おさん茂兵衛」の掛け合い朗読を上演した。今回の一人語りはこれをさらに発展させたもの。

 「前回は弟子たちが朗読、私はト書きをやりましたが、今回は私が一人で五人の登場人物を語り分ける。初挑戦ですから難しいですねえ。しかも東京は初めてでしょ」と、大ベテランも謙虚だ。

 薪車を名乗っていた時代から「菅原伝授手習鑑 筆法伝授」の武部源蔵、「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」の一寸(いっすん)徳兵衛などの大役に挑む一方、上演の途絶えた珍しい演目を掘り起こし、自主公演で復活させてきた。若手の育成にも力を入れ、役者兼プロデューサーとして高い評価を得ている。

 一人語りに挑む「おさん茂兵衛」は、正式の演目名を「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」といい、近松の三大姦通(かんつう)物の一つに数えられる。

 京都烏丸通りの大経師・以春(いしゅん)の妻おさんは、夫が通う下女のお玉と寝床を取り換えたことから、暗闇で誤って手代の茂兵衛と密通してしまう。不義密通は死罪。おさんと茂兵衛は丹波の山奥に身をひそめるが、密告によって捕らえられ…。近松が当時実際に起きた密通事件を基に書いた。登場人物は敵役の番頭・助右衛門を加えた五人。

 照明も装置もない舞台で、ふすま一枚を背景に見台が一つ。羽織はかま姿で座ったままの一人語りは約一時間に及ぶ。「キャパ(広さ)的にはいい。男から女、おかみさんと下女、登場人物が異なるでしょう。頭の中ではできているんですけどね。一人一人に心を入れて、ぜひ成功させたい」

 前回の掛け合いとは台本を変える。前回に引き続き劇伴を担当する岡崎は新たに物語に即したオリジナル楽曲を創作した。人の出入り、場面展開、心情の変化の語りに挿入する。「五人の役をイメージし、間を考慮しながら曲作りをしました」と岡崎は言う。

 竹三郎は「歌舞伎という古典中心の伝統は崩してはいけません。だから切り口を変えるしかない。朗読という新しい試みで歌舞伎のよさを残せればいいと思っています。私の役者生活の凝縮です」。歌舞伎の新しい魅力を追求し、ファンが増えることを願っている。

 時間を見つけては浪曲、寄席、映画を見て回るという勉強家。「必ず何かを得ようと思って、真剣に見るから疲れますが、役者にチャレンジ精神がなくなったらおしまいです」と力を込める。

 一人語りの前に、上方歌舞伎の隆盛、衰退、新たな勃興を体験した竹三郎の芸談もある。四千円。(電)050・1332・3011。

 ばんどう・たけさぶろう 1932年、大阪生まれ。49年、四代目尾上菊次郎の弟子になり、「盛綱陣屋」の腰元で初舞台。59年、三代目坂東薪車を襲名し、名題昇進。67年、菊次郎の名前養子となり、朝日座で「吉野川」の久我之助ほかで五代目竹三郎を襲名。「仮名手本忠臣蔵」六段目の母おかやなどの老け女方から、「義経千本桜 すし屋」の弥左衛門などはまり役は多い。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo