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【伝統芸能】

<落語>真打ち300人超、競う春 順当な昇進 サバイバル激化

 春、落語界は新しい真打ちが誕生する季節。お披露目の興行も始まり、東京都内の寄席はにぎわいを見せる。今年は落語協会(協会)で五人、落語芸術協会(芸協)で二人が昇進。落語人気もあって真打ちは増え続け、協会はちょうど二百人、芸協も百人になった。晴れの高座の後は、厳しい競争が待っている。 (神野栄子)

 二十一日から上野・鈴本演芸場の下席(三十日まで)で披露興行が始まった協会の新真打ちは、林家ひろ木(37)、春風亭朝也(ちょうや)改め春風亭三朝(さんちょう)(38)、柳家ろべえ改め柳家小八(40)、三遊亭時松改め三遊亭ときん(41)、鈴々舎馬(れいれいしゃま)るこ(36)の五人。ひろ木は津軽三味線を弾きながら一席披露する「三味線噺(ばなし)」に力を入れていて「落語と二刀流で頑張る」と抱負。馬るこは「初心者もマニアも大爆笑させるような自分の落語を目指す」と気合を入れた。国立演芸場の五月中席(十一〜二十日)まで、お披露目が続く。

 芸協は昔昔亭(せきせきてい)桃之助(46)と笑福亭和光(44)。ともに入門が三十歳前後と遅く、桃之助は東京・浅草のつくだ煮店勤務から転身。和光はトラック運転手出身で、笑福亭鶴光のラジオに夢中となり入門した。鶴光は「東京で上方落語を学び、未完成だがいい味になってきてますな」とエールを送る。披露興行は新宿末広亭の五月上席(一〜十日)夜の部から。

 五代目円楽一門会では三遊亭橘也(きつや)(38)が朝橘(ちょうきつ)と改名し、四月一日の東京・お江戸両国亭を皮切りにお披露目する。

 近年の真打ち昇進は「何十人のごぼう抜き」のような際立った逸材がなく、ほぼ入門順に昇進している。演芸評論家の布目英一さんは「二つ目までにどんな努力をして、ファンを獲得したかが大切になっている。お披露目興行の時は脚光を浴びるが、ファンがついていないと苦労する」と指摘する。真打ちの人数が増え続けている状況を芸協理事の桂文治は「新真打ち地獄」と語り「頭一つ出るためには、人の一・五倍は努力しなければいけない」とさらなる奮起を促した。

◆柳家小八 同業の妻は「ブレーン」

 落語協会の柳家小八は、妻が二つ目の三遊亭粋歌(すいか)(40)。噺家(はなしか)同士の夫婦は「史上初」で、小八は「何でも相談できるいいブレーンのような存在」と同い年の妻に全幅の信頼を寄せる。

 小八は妻の笑いのセンスを評価する。粋歌は「楽屋の会話のように、しゃれで切り出されたらしゃれで返す。家庭内の会話のキャッチボールが普通と違っているかも」と笑う。日常会話がギャグの感覚を鋭くしている。

 小八は東京農工大在学中に初めて足を運んだ寄席で、柳家喜多八さん(昨年死去)の落語に魅了され、卒業後に入門。「師匠は『自分で考えなさい』というスタイル」。自分で思慮を巡らせ、想像力を尽くし芸を築いた。師を失い、その師匠の柳家小三治の一門に移った。

 三遊亭歌る多一門の粋歌は新作で笑いを取る。古典に打ち込む小八と芸風は異なるが妙に波長が合い、夫婦となった。粋歌は「仕事面でスケジュールを把握するなどサポートしてます」と内助の功にも奮闘する。昨年、第1子の女児が生まれ、小八もさらに気合が入る。

 「(小三治の師匠)五代目(柳家)小さんは噺の登場人物の『了見(心持ち)になれ』、小三治師匠は登場人物の『心』になれと。喜多八師匠は『ハート』だと」。脈々とつながる「柳家の精神」を心に刻み、高座に上がる。

 6月30日に池袋演芸場で第1回「柳家小八の会」を開く。7月23日には、故郷の広島県福山市で開催の「小三治一門会」にも出演する。

 

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