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【伝統芸能】

<新かぶき彩時記>「盲目物語」の弥市 秘めた恋心の哀れ

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 「そばにいられるだけで幸せ」。そんな秘めた恋心を描いたのが「盲目物語」。谷崎潤一郎原作の新歌舞伎です。 

 主人公は盲目の法師・弥市。戦国武将・柴田勝家に嫁いだお市の方に仕えています。按摩(あんま)と音曲が得意な弥市の楽しみは、慕っているお市との合奏でしたが、勝家が戦に敗れ、幸せな日々も終わります。落城時に「自分も道づれに」と泣く姿が哀れですが、お市の娘・茶々(ちゃちゃ)を伴い城を脱出する際に、身体の感触がお市に似ていると気づきます。茶々に「これからも自分を側(そば)に置いてほしい」と頼みますが、そのただならぬ様子に、茶々は弥市を置き去りにします。

 キーパーソンは、お市に恋慕し城を攻める木下藤吉郎。藤吉郎を嫌い抜くお市は夫と自害します。月日が流れ、琵琶湖のほとりに関白・秀吉となった藤吉郎と、側室・淀君となった茶々がやって来ます。貧しい人々に施しをするその中に、落ちぶれた弥市の姿が。尊大な秀吉と弥市を早替(はやが)わりの一人二役で演じるのも眼目。人々が去った後、昔を想(おも)い弥市が三味線で唄(うた)う「思うとも その色人に知らすなよ」という文句が印象的。同時に湖上にお市の幻が現れ、琴で合奏するという美しく哀れな幕切れです。 (イラストレーター)

 

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