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【伝統芸能】

<和の懸け橋>地球が舞台「太神楽」 仙丸(48)・朱仙(47)夫妻

 夫は口にくわえたバチに土瓶を乗せ、妻は手にした刀の上で独楽(こま)を回す−。獅子舞や傘回しで知られる「太神楽(だいかぐら)」を引っ提げ、約二十年間で四十カ国近くを回ってきた。路上や公園で披露すると、固唾(かたず)をのんで見守る人々から大きな歓声と拍手が起きる。江戸太神楽曲芸師の仙丸(48)と妻の曲独楽(きょくごま)師の朱仙(47)は「日本代表という心持ち」を大切にする。

 どの国でも片言の現地語で掛け合いをして観客をほぐす。仙丸は土瓶の芸のほか、傘の上で升や毬(まり)を回し、あごに立てた台の上に茶わんなどをどんどん乗せていく「五階茶碗(ごかいちゃわん)」などを得意とする。朱仙も負けずに風車や扇子の上で独楽を自在に操る。観客は間近に見るクールジャパンに興奮し、一緒に写真を撮ろうと行列ができる。

 夫妻が太神楽と出合ったのは舞台俳優を志していた二十代後半の時。二人はそれぞれアルバイト情報誌で、日本の伝統芸能を紹介するドイツ公演の出演者を募集するオーディションの告知を見て、応募したことがきっかけだった。

 仙丸と朱仙は江戸太神楽の鏡味小仙(現・丸一仙翁(まるいちせんおう))に半年近い特訓を受け、ドイツ公演に臨む。半年ほど後に帰国すると、二人は正式に小仙に入門。朱仙は曲独楽に適性を感じ、独楽の修業に入った。

 仙丸は師匠や兄弟子らと海外公演の経験を重ね、しばらくして朱仙とコンビを組む。二人は「現地の人とコミュニケーションを取るのが励みになる」と、パソコンの翻訳ソフトを駆使して、英語やドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語などの簡単な日常会話を覚え、どの国でも現地の言葉で話しかけるようにしている。

 南米コロンビアのように治安が悪い国や、アフリカのスーダンといった発展途上の地域にも出向いた。どこでも子どもたちが真剣なまなざしで見て、喜んでいる顔を見ると「エンターテインメントは必要なんだ」と実感する。

 一年間の半分くらいは海外にいるが、最近は特にドイツの仕事が多い。「バリエテ」と呼ばれる日本の演芸場のような施設では、付属の宿舎に数カ月間、寝泊まりして舞台に立つ。

 新しい技の習得に努める一方で「いま実演している技をより美しく、より面白く見せる工夫も必要だ」と仙丸は技を磨く。そして、話芸の大切さを痛感する二人は「笑いを取りたい。技と技の間合い、おしゃべりや掛け合いをもっと研究したい」と口をそろえる。

 日本に戻って芸を披露すると、外国人観光客から「イタリアで見たよ」と声を掛けられたり、来日した米国やカナダの芸人仲間と交流したりする機会が増えた。地球はどこでも舞台だと二人は思う。「日本の大衆芸能の種をまいてきたが、未踏の地にぜひ行きたい」 (神野栄子)

<太神楽> 奈良時代に中国から渡ってきた奇術のような曲芸「散楽(さんがく)」が起源とされる。江戸時代には熱田神宮派、伊勢神宮派の太神楽が江戸に進出し、昭和初期ごろまでに「翁家」「丸一」といった屋号の親方たちが「江戸太神楽」として、寄席の色物として発展させた。曲独楽も太神楽の一種で、江戸期に生まれた。独楽を扇子に乗せる「綱渡り」などの芸がある。

 

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