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【伝統芸能】

<お道具箱 万華鏡>シシオドリ 心揺さぶる謝肉の舞

鹿子躍の一場面(行山流舞川鹿子躍保存会提供)

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 東北地方を中心に伝承されてきた「シシオドリ」という芸能がある。「鹿踊」「鹿子躍」とも書く。人間が鹿の姿となって、大地の上で歌い、踊るもので、魂に響くリズムあり、ユーモラスな芝居ありで、見るものの心を大いに揺さぶる。

 岩手県一関市舞川という山村エリアに伝わる行(ぎょう)山流(ざんりゅう)舞川鹿子躍(まいかわししおどり)は、踊り手自身が太鼓を打ち、白く長いササラを背負っているのが特徴。踊り手が扮装(ふんそう)するために必要な道具は、舞川在住の小野寺重次さんが手作りしている。

 カシラと呼ばれる頭の部分には、本物の鹿の角を用いる。「猟師がうった鹿の角や、神社の鹿が秋に角切りをしたときのものをいただきます」と小野寺さん。角は縦半分に割り、裏側を削って軽量化を図りつつ、美しく磨きあげていく。

 シシオドリの「シシ」は肉食用の獣のこと。東北の人たちは、自分たちが食糧としてきたシシへの感謝や供養の気持ちを込めて、踊り続けてきた。

 祈りの芸能ということを強く感じさせるのがササラだ。竹に白紙を貼ったもので、天と地を結ぶ役割を担うという。約三メートルとかなり長いのは神様とつながりやすくするため。これを時折、地面にたたきつけて悪を払い、場を清める。

 小野寺さんもかつては「中立(なかだち)」という踊り手のリーダー格だった。「長く踊り伝えてほしい。そのために道具も工夫しながら作ってきた」と静かに語る。若い踊り手からも慕われ、最近はササラやわらじの作り方を教えている。

 心を残すべきものが、故郷にある。それが郷土芸能なのだろう。 (田村民子)

 ※「伝統芸能の道具ラボ」を主宰する田村民子さんの道具にまつわるエッセーを随時掲載します。

 

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