東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<和の懸け橋>英に広がる琉球の音色 ロンドン沖縄三線会

 沖縄県が太平洋戦争における組織的戦闘の終結を記念して制定した「慰霊の日」翌日の六月二十四日、沖縄から遠く離れたロンドン東部の広場に、三線(さんしん)のゆったりとした音色と素朴な歌声が響いた。琉球古典音楽の名曲「かぎやで風節(かじゃでぃふうぶし)」。英国や欧州の人たちと、沖縄出身者でつくる愛好家集団「ロンドン沖縄三線会」のライブイベント。ステージで三線を弾き、歌を披露したMINA(ミナ)(34)は「三線のエキゾチックな音色に足を止める人も多かった」と手応えを感じていた。

 「Okinawa Day」と銘打ったイベントは二〇〇九年から毎年、「慰霊の日」の前後に同会などが開催している。もともと祝宴曲の「かぎやで−」などが披露され、観客も巻き込み陽気に歌い踊る。

 スイス人の父と日本人の母を持つMINAは琉球大に留学し「かぎやで−」に出会った。スイスでピアノやバイオリンを学んでいたMINAは、沖縄で三線を学び、一一年にロンドンに移ったのを機に、会に加入した。「沖縄の音楽は人を元気づける。多くの人が犠牲になった戦争のつらい歴史があったからこそ、そういう力があると感じる」と話す。

 会を立ち上げたのは沖縄在住の英国人音楽家ロビン・トンプソン(66)。ロンドンでピアノや作曲を学び、一九七五年に来日。東京芸術大大学院で雅楽などを研究していた八二年、琉球音楽や舞踊の公演を鑑賞して「人の心を動かす伝統芸が生きている」と感激し、傾倒していった。

 雅楽などのオリジナル曲を手掛ける傍ら、三線を習得し、師範の資格も得た。三線の楽譜「工工四(くんくんしー)」を五線譜に置き換え、琉球音楽の特徴を理論的に解明する研究も続けている。

 東京からロンドンに戻っていた九〇年代後半、仲間の沖縄民謡の研究者や弟子らとコンサートを開催、大反響を得た。沖縄の留学生らも加わり、十人程度で会を設立。イベントでは沖縄の盆踊り「エイサー」も披露している。

 会のメンバーは現在約三十人。ロンドンの大学で教えながら演奏活動を続けてきたトンプソンはある時「かぎやで−」を演奏すると、沖縄出身の老女が故郷を思い涙を流していたという。「音楽は沖縄の人たちの生きる支え」と実感した。沖縄音楽の魅力を追求するため、トンプソンは一五年に生活の拠点を沖縄に移したが、メンバーたちは毎週土曜日に集まり、練習を重ねている。

 沖縄音楽の輪はフランスやドイツ、カナダ、南米にも広がる。MINAは「沖縄といえばビーチを連想する人も多いけれど、音楽を聴けばその意識も変わる。世界に広げたい」と笑う。 (藤浪繁雄)

◆MINAの歌も収録 来月アルバム発売

 三線だけでなく歌唱力も注目されるMINAは、日本で来月2日に発売される沖縄民謡のアルバム「ウチナー・ラヴソング」のレコーディングにも参加した。

 全19曲収録のアルバムで、MINAと沖縄民謡の実力派女性歌手5人が3曲ずつを担当。MINAは「うんじゅが情どぅ頼まりる」など3曲をソロで歌い、ラストの「ナークニー〜カイサレー」を全員で歌った。MINAは「刺激も受けたし、もっと勉強したいと思った」と話している。

 アルバム発売を記念して8月27日午後5時半から、東京・代官山のUNITでライブを開催する。UNIT=(電)03・5459・8630。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報