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【伝統芸能】

<歌い踊る切手>石川五右衛門 二世實川延若(1992年) 世界に先駆けた偉才

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 歌舞伎は、多様な舞台機構を駆使した派手な演出が魅力の一つだ。

 中でも豪快なのが「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」の「南禅寺山門の場」。三味線の激しい撥(ばち)さばきによる「大薩摩」の演奏が終わると、幕が切り落とされ、満開の桜に囲まれた山門が現れる。

 上層の回廊に座った五右衛門は、長く伸びた「百日鬘(ひゃくにちかつら)」に、派手な金襴(きんらん)の丹前を着て、手には長いキセルを持つ。京の街を見回しながら「絶景かな、絶景かな…」の名セリフを響かせる。

 捕り手との立ち回りをきっかけに、五右衛門を乗せたまま舞台一面の「大セリ」が一気に上がり、山門の下層が姿を現す。

 「楼門五三桐」の歴史的な名演とされるのが、一九五〇年に東京劇場で二代目實川延若(じつかわえんじゃく)が石川五右衛門を演じた舞台。延若は、明治・大正・昭和と三代にわたり活躍した上方歌舞伎の名優。その時の名演は、切手の歌舞伎シリーズにもなっている。

 「楼門五三桐」の作者は、初代並木五瓶(なみきごへい)だが、初めて歌舞伎で「セリ」(舞台の一部を上下させる装置)を使った演出を考えたのは師匠・並木正三(しょうざ)とされる。正三は、近松門左衛門、四代目鶴屋南北、河竹黙阿弥のように後世に名を残すことはなかったが、大坂で活躍した作者で、大掛かりな仕掛けを使った作品を次々と作り大評判となった。

多くの観光客が眺望を楽しむ南禅寺の山門=京都市左京区で

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 「回り舞台」を考案したのも正三。一七五八年に初演された「三十石(さんじっこく) 〓(よふねの) 始(はじまり) 」でのこと。ヨーロッパで「回り舞台」が試されたのは、これから約百四十年後だ。このことからも正三の凄(すご)さがわかる。 (横浜能楽堂館長・中村雅之)

※〓は、舟へんに登

 

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