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【伝統芸能】

<支える人>歌舞伎大道具師・十七代目長谷川勘兵衛さん 役者引き立てる創意工夫

 「大道具」という漢字が「はせがわ」と読まれた時代があったほど、「長谷川」の名前は江戸歌舞伎と深く結ばれてきた。その長谷川大道具の系譜を継ぐのが十七代目長谷川勘兵衛さん。九十三歳の今も歌舞伎座で大道具師の生き字引として舞台稽古から初日、二日目くらいまで、厳しい目を光らせる。

 「舞台は何といっても役者さん第一。芝居の邪魔をしないで、役者さんが引き立つようにするのが裏方の仕事です」。役者の身長や扮装(ふんそう)に合わせ、欄間の寸法を広げるなど観客の気付かない配慮は少なくない。

 二月の東京・歌舞伎座で江戸歌舞伎三百九十年「猿若祭大歌舞伎」が行われたが、勘兵衛の初代は宮大工の棟梁(とうりょう)で、中村座、市村座、森田座(守田座)の江戸三座の大道具、小道具を手掛けるようになった。「草創期は大道具といっても簡単な物だったようだ」と話す。十年ほど前に初代の三百五十回忌を行ったという。

 代々の勘兵衛は舞台の立ち木や柴垣の創案をしたほか、歌舞伎作者の並木正三(しょうざ)が上方で開発した回り舞台を完成させた。数々の仕掛け道具、五重塔のような大建築物のセリ上げなど、現在も使われている大道具の多くは勘兵衛の仕事だ。十七代目も一九四〇年くらいから家業を手伝い、戦後間もなく長谷川大道具株式会社(現・歌舞伎座舞台)に入社してカンナ研ぎや絵描きさんの絵の具溶き、障子ふすま張りから修業。「昔の人は本当によく考えて作っている。長い歴史の工夫もある。とはいえ、『四谷さま(四谷怪談)』の仕掛けなどは小道具、衣裳(いしょう)、かつらの人まで全員で作り上げたものなんです」

 裏方の世界は尺貫法。設計図、絵図面(道具帳)を基に精密に組み立てられる。十七代目は言う。「上演台本をしっかり読むのが基本。歌舞伎大道具は芝居全体を考えて作られており、きちんと理解できないと作れない。私も台本は必ず読みます」 (森洋三)

 

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