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【伝統芸能】

<らくご最前線>三遊亭兼好 独創と話芸、ケンコウ第一!

 七月十八日、東京・半蔵門の国立演芸場で開かれた三遊亭兼好(けんこう)独演会「けんこう一番!」を見た。兼好は今、東京で最も勢いのある落語家の一人。客席数三百があっという間に完売だ。

 一席目は「金明竹(きんめいちく)」。使いの男の上方言葉の口上が聞きとれないというおなじみの前座噺(ばなし)だが、兼好はしぐさや表情のおかしさと独自のせりふ回しで新鮮に笑わせる。

 二席目は「お菊の皿」。長屋の連中が皿屋敷のお菊の幽霊を見物に行く噺だが、兼好はまず怪談「番町皿屋敷」そのものを語り出す。講談さながらの語り口に聞き入っていると、「…これが番町皿屋敷だ」「こわーい! ご隠居、怪談うまいですねぇ」と長屋の会話へ。怪談をご隠居が若い者に聞かせていた、という意表を突いた演出だ。

 美人だと評判になって人気が出たお菊が俗っぽくなっていくプロセスを、兼好はテンポ良く描く。酒浸りのお菊が口にするオチの一言もひねりが効いている。

 三席目は幇間(ほうかん)(たいこ持ち)が鰻(うなぎ)屋で客に食い逃げされる「鰻の幇間(たいこ)」。普通は客のほうから「師匠じゃないか」と声を掛けてくるが、兼好は幇間が「あの人、見覚えあるな」と浴衣がけの男に近寄り「イヨッ!」と声を掛けるやり方。幇間自ら災難を招くのである。

 何を口にしても「美味(うま)いっ!」と甲高い声で褒める幇間の調子の良さは、兼好ならでは。鰻を食べながらさかんに小骨を口から出す描写が、後に女中相手に延々とダメ出しする場面での「骨を気にしながら鰻食べたの初めてだよ!」のせりふに結びついて爆笑を生む。

 次々に繰り出されるギャグの独創性と、幇間の悲哀を軽やかに笑いに変換する的確な話芸。そこに兼好自身の明るく楽しいキャラが加わった「鰻の幇間」、絶品である。 (広瀬和生=落語評論家)

 

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